笹倉武久

笹倉武久：競馬人生の軌跡

笹倉武久氏は、1945年3月28日、千葉県船橋市（東京都府中市生まれ）で誕生しました。父は厩舎の厩務員という環境で育ち、幼少期から競馬に身近に触れていましたが、当初は騎手を目指していたわけではありませんでした。中学校では柔道部に所属し、身長を伸ばすことを目標に練習に励みましたが、思うように身長は伸びませんでした。しかし、幼い頃から馬に魅せられ、乗馬苑でこっそり乗馬の練習をするなど、馬への情熱は日に日に増していきました。

やがて、経済的な理由も加わり、馬事公苑騎手養成長期課程への入学を決意します。同期には、後に競馬界で活躍する多くの騎手たちが名を連ねていました。1962年、東京・田中和夫厩舎に入門。田中厩舎は開業したばかりで、笹倉氏は最初の弟子の一人となりました。厩舎には先輩騎手もおり、年齢は上でしたが、後に有名な騎手となる畠山重則氏とも同厩舎で共に過ごしました。二人の間には、年齢差や競馬界入り時期の違いからくる様々なエピソードが残されています。

1964年、騎手免許を取得し、騎手としてデビュー。見習い時代は厳しい修業の日々を送りました。47kgという見習い騎手の斤量で騎乗することはありませんでしたが、体重調整の苦労は絶えませんでした。デビューから3年目の1966年には自己最多となる24勝を挙げましたが、その後は勝ち星が減少していきました。1971年には仲住達弥厩舎、1973年には石栗龍雄厩舎へと移籍を繰り返しました。

1974年、東京優駿（日本ダービー）でインターグッドに騎乗し、コーネルランサーにハナ差で敗れ2着となりました。インターグッドとはデビューから引退までコンビを組み、その能力を高く評価していました。ダービーでは勝利を確信し、勝利インタビューまで考えていたほどです。レースでは、好位をキープし、直線で抜け出すも、ゴール直前でコーネルランサーに差し返され、惜しくも2着に終わりました。このレース後、インターグッドの蹄鉄がずれていることが判明し、敗因の一つとなった可能性も示唆されています。笹倉氏は、このダービーでの敗戦を自身の未熟さによるものと振り返っています。

1979年、騎手を引退。中央競馬通算1182戦121勝という成績でした。重賞勝利はありませんでしたが、多くのレースで騎乗し、経験を積みました。引退後は、師匠である田中和夫厩舎の調教助手として活躍。1984年には調教師免許を取得し、1985年に自身の厩舎を開業しました。

調教師としては、1990年にサシオギでタマツバキ記念を制し、騎手時代を含め重賞初勝利を飾りました。1991年からは、逃げの戦法で知られるツインターボを管理。ラジオたんぱ賞、七夕賞、オールカマーなど重賞3勝を挙げ、競馬ファンの記憶に強く残る馬となりました。その後も多くの馬を管理しましたが、2006年を最後に勝利から遠ざかり、2008年には定年前に厩舎を廃業しました。中央競馬通算3261戦132勝、地方競馬140戦12勝という成績でした。

2021年9月22日、心不全のため76歳で死去しました。騎手、調教助手、調教師として長年に渡り競馬界に貢献した笹倉武久氏の功績は、後世に語り継がれることでしょう。主な管理馬として、サシオギ、ツインターボ、グランリーオなどが挙げられます。彼の厩舎には、後に調教師として成功を収めた高橋義博氏や、騎手として活躍した宗像徹氏などが所属していました。笹倉武久氏の競馬人生は、成功と挫折を経験しながらも、常に馬への愛情と情熱を貫いた、波乱に満ちた物語でした。

もう一度検索