筑前国分寺

筑前国分寺は、福岡県太宰府市にある高野山真言宗の寺院で、山号を龍頭光山と称します。本尊は薬師如来です。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つ、筑前国分寺の後継寺院にあたります。

歴史

筑前国分寺は、大宰府政庁跡の北西の台地上に位置し、現在の国分寺は創建時の僧寺跡と重なっています。その西には尼寺跡、東には両寺の瓦を焼いた瓦窯跡が残っています。

創建に関する記録は残っていませんが、古くは延暦20年（801年）に四王院から仏像や法具が「筑前金光明寺」に移されたという記録があります。しかし、この仏像等は大同2年（807年）に元に戻されています。『延喜式』には、筑前国分寺の運営に必要な費用として32,293束が定められていました。

その後、江戸時代中期には寺は廃絶しましたが、江戸時代後期には薬師如来を安置する堂と小庵が設けられ、これが現在の国分寺の前身とされています。寺伝によると、江戸時代に修行僧が国分寺の廃絶を嘆き小庵を結んだのが始まりで、元文年間（1736年-1741年）や天明年間（1781年-1789年）に勧進によって修復・再興が図られました。しかし、文政10年（1827年）に本堂が焼失し、天保4年（1833年）に庫裏が再建されました。

境内

現在の伽藍は、創建時の金堂跡に重複して建てられています。境内には、本堂、礼拝堂、観音堂、庫裏などが配置されています。門前に立つ八角燈籠は、東大寺大仏殿前の燈籠をモデルに近年制作されたものです。

筑前国分寺跡

僧寺跡の寺域は約192メートル四方で、中門、金堂、講堂が直線上に配置され、中門左右から出た回廊が金堂に取り付く構造をしています。回廊内部には塔が配置されるという特徴的な形式は、九州地方や奈良時代以前の寺院に多く見られます。塔は七重で、その10分の1の復元模型が太宰府市文化ふれあい館の屋外に展示されています。

発掘調査の結果、9世紀には塔や講堂が瓦積基壇から乱石積基壇に改修され、10世紀に塔が、11世紀に講堂が廃絶したと考えられています。その後は金堂のみが草堂として存続したとされています。現在は、金堂跡の上に現在の国分寺が立ち、周囲には講堂、塔、回廊の位置が復元されています。

筑前国分尼寺跡

尼寺跡は、僧寺の西方約100メートルの場所に位置すると推定されています。遺構としては、掘立柱建物（南門と推定）や東外郭線と見られる溝などが確認されています。また、中枢施設のものと見られる礎石1個が南方の国分共同利用施設に、もう1個が太宰府市役所前の庭に移設されています。

発掘調査の結果、尼寺は8世紀後半頃から9世紀後半頃に存在していたと推定されています。平成27年（2015年）には、国分尼寺であったことを示す初めての物証となる「花寺」銘の墨書土器が発見されましたが、現在は遺構の史跡整備は行われていません。

国分瓦窯跡

国分瓦窯跡は、僧寺の東方に位置する瓦窯の遺構です。山の谷を利用して窯が築かれていましたが、江戸時代に谷はせき止められて池となっています。かつては9基以上の窯が確認され、うち2基が調査された後、埋め戻されました。

出土した遺物から、この瓦窯は奈良時代初めから平安時代にかけて長期にわたり使用されたと推定されています。ここで焼かれた瓦は、国分寺だけでなく、大宰府政庁や観世音寺にも運ばれたと考えられています。

文化財

重要文化財（国指定）

木造如来坐像（伝薬師如来坐像）（彫刻） - 室町時代に制作されたもので、明治37年2月18日に指定されました。

国の史跡

筑前国分寺跡 - 1922年（大正11年）10月12日に指定され、その後、範囲が何度か追加指定されています。
国分瓦窯跡 - 1922年（大正11年）10月12日に指定されました。

現地情報

所在地
国分寺（旧・現）：福岡県太宰府市国分4-13-1
国分尼寺（旧）：福岡県太宰府市国分（北緯33度31分14.18秒東経130度30分12.80秒）
国分瓦窯跡：（北緯33度31分17.22秒東経130度30分33.77秒）

周辺

若宮神社：国分寺跡の東北に鎮座しており、石祠前の礎石は国分寺跡のものとされています。境内のムクノキの巨樹は、太宰府市指定天然記念物です。
国分天満宮（天満神社）
大宰府政庁跡
観世音寺
水城跡

交通アクセス

西鉄天神大牟田線都府楼前駅から徒歩17分（1.4km）
都府楼前駅からまほろば号（水城回り・国分回り）に乗車
国分寺：「筑前国分寺」下車
国分尼寺：「国分共同利用施設」下車
国分瓦窯跡：「文化ふれあい館」下車
九州自動車道太宰府インターチェンジから2.3㎞

参考文献

各所説明板
『筑前国分寺跡』（太宰府市教育委員会、1999年）
『日本歴史地名大系福岡県の地名』（平凡社）太宰府市筑前国分寺跡項

関連文献

福岡県教育委員会
『筑前国分寺 -昭和51年度発掘調査概報-』(1977年)
『筑前国分寺 -昭和52年度発掘調査概報-』(1978年)
『史跡筑前国分寺跡および国分瓦窯跡 -環境整備事業実施報告書-』(1980年)
『史跡筑前国分寺跡 -発掘調査及び環境整備事業実施報告書II-（福岡県文化財調査報告書第118集）』(1994年)
太宰府市教育委員会
『筑前国分寺跡I -外郭線及びその周辺の調査国分瓦窯跡の調査-（太宰府市の文化財32）』(1997年)
『筑前国分寺跡II -国分寺外郭施設の調査-（太宰府市の文化財40）』(1999年)
『筑前国分寺跡III -西外郭施設・付帯施設の調査-（太宰府市の文化財106）』(2009年)

外部リンク

筑前国分寺跡 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
筑前国分寺跡 - 太宰府観光マップ
筑前国分寺跡 - 九州国立博物館「西都大宰府」
龍頭光山筑前国分寺 - 九州四十九院薬師霊場会

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