筑後国分寺跡

筑後国分寺跡について

筑後国分寺跡は、現在の福岡県久留米市に位置する、奈良時代に建立された国分寺の跡地です。この地は、かつて筑後国の政治・文化の中心地であり、国分寺は国家の安寧を祈る重要な施設でした。

歴史的背景

国分寺は、聖武天皇の詔により、天平13年（741年）に全国各地に建立が開始されました。その目的は、仏教の力によって国家の安定を図ることでした。筑後国分寺もその一つとして、筑後国に建立されました。しかし、創建に関する具体的な記録は残っておらず、詳しい創建時期や経緯は不明です。

『続日本紀』には、天平勝宝8歳（756年）に筑後国を含む26ヶ国の国分寺に対して法具が頒布された記録が残っています。また、『延喜式』には筑後国分寺の寺料が13,394束と記載されており、当時、国分寺が重要な役割を担っていたことが伺えます。しかし、仁治2年（1241年）の文書によれば、当時すでに国分僧寺・尼寺ともに有名無実化し、破損が甚だしかったとされています。その後、武士の台頭とともに寺領は失われ、衰退していきました。

室町時代から近世初頭にかけて、国分寺は久留米市宮ノ陣にある天台宗の護国山国分寺に移転したとされています。慶長年間（1596年-1615年）には、僧寺跡を横切る形で柳川街道が建設されたことから、この頃には創建時の場所には寺院は存在していなかったと考えられます。寛延2年（1749年）の『寛延記』には、この地が国分寺跡として記載されています。

伽藍の構造

僧寺跡は、現在の日吉神社境内に位置しており、寺域は約150メートル四方と推定されています。遺構としては、講堂跡、塔跡、築地跡が確認されています。講堂跡は東西7間（約29メートル）、南北4間（約13メートル）と想定され、神社境内には礎石が1個残っています。また、道路を挟んで塔跡があり、現在は釈迦堂が建っている場所から塔の基壇の一部が見つかっています。その規模は一辺約9メートルと推定されています。さらに、その周囲からは築地塀の溝跡も発見されています。この他、瓦窯跡が馬場田で発見されており、寺院で使用された瓦がここで焼かれていたと考えられます。

筑後国分尼寺跡

筑後国分尼寺跡は、僧寺跡の北約200メートルの西村地区に位置すると推定されています。「西」は「尼寺」の転訛であるという説もあります。遺構は見つかっていないものの、周辺からは多数の古瓦が発掘されています。これにより、この地がかつて尼寺であった可能性が高いと考えられています。

文化財

筑後国分寺跡（講堂・塔及び回廊跡）は、昭和56年6月1日に久留米市指定史跡に指定されています。これは、この場所が歴史的に重要な場所であることを示しています。

現地情報

所在地:

国分寺跡：福岡県久留米市国分町（日吉神社境内）

周辺:

高良大社：筑後国一宮

まとめ

筑後国分寺跡は、奈良時代に建立された国分寺の一つであり、当時の政治・文化を知る上で重要な遺跡です。現在の久留米市中心部に位置し、その歴史を今に伝えています。かつての伽藍の姿は失われつつありますが、発掘された遺構や出土品から、当時の寺院の様子を想像することができます。また、近隣の筑後国分尼寺跡もまた、この地域の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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