筑波山神社・筑波大学計算科学研究センター共同気象観測所

筑波山神社・筑波大学計算科学研究センター共同気象 観測所

茨城県つくば市にそびえる筑波山の男体山山頂、標高868m地点に設置されている気象観測施設です。正式名称は「筑波山神社・筑波大学計算科学研究センター共同気象観測所」といい、現在は筑波山神社が施設を所有し、筑波大学計算科学研究センターが協力して気象観測を行っています。その歴史は古く、日本の山岳気象観測の先駆けとして、100年以上にわたり重要な役割を果たしてきました。

概要

関東平野の中で最も標高が高い筑波山は、広範囲の気象状況や地表付近の空気の状態を観測する上で非常に適した場所にあります。この地理的な利点を活かし、古くから気象観測が行われてきました。共同気象観測所は、筑波山を構成する二つの峰のうち、男体山の山頂に位置しています。かつては気象庁の「筑波山地域気象観測所」として運用されていましたが、アメダス観測網の再編に伴い2001年末に一時閉鎖。その後、筑波大学がこの貴重な観測拠点を継承し、2006年より観測を再開しました。2016年からは筑波山神社との連携を強化し、現在の共同運営体制となりました。

目的と活用

観測所の主な目的は、継続的な気象観測を通じて詳細なデータを得ることです。しかし、その役割はそれだけにとどまりません。水の循環に関する水文学的な研究、地球温暖化と都市部で起こるヒートアイランド現象の識別、未来を担う世代への環境教育、そして観測データの公開を通じた社会貢献など、多岐にわたる活動拠点となっています。特に、観測データは筑波大学計算科学研究センターのウェブサイトで一般公開されており、様々な研究機関や民間企業によって活用されています。関東平野における雪の降る可能性を判別する際の貴重な情報源となったり、ウェザーニューズのような気象情報提供会社との連携研究を通じて、より精度の高い予報技術の開発に貢献したりしています。局地的な予報の精度向上や環境変化の予測モデル構築など、幅広い分野での活用が期待されています。

観測内容

現在、共同気象観測所では気象業務法に基づき、17項目にわたる気象要素を自動で観測しています。観測データは一定間隔でまとめられ、インターネットを通じて大学の研究室へリアルタイムで送られています。雨量計のように明治時代から同じ場所に設置され続けている観測機器がある一方で、筑波大学が新たに導入した天気計のような最新機器も稼働しています。特に、気象庁の測候所時代には観測されていなかった花粉の飛散量や空気中の二酸化炭素濃度といった項目も測定しており、環境モニタリングの観点からも重要なデータを収集しています。観測機器は2016年3月に一新され、より高精度な観測が可能になりました。

歴史

筑波山での気象観測は、日本の山岳気象観測の黎明期である1893年（明治26年）に中央気象台によって始まりました。その後、気象研究に熱心だった旧皇族の山階宮菊麿王が私財を投じて測候所を建設し、1902年（明治35年）に「山階宮筑波山測候所」として日本初の山岳測候所が開設され、通年観測がスタートしました。山階宮逝去後、測候所は国に寄贈され、中央気象台の附属機関となります。現在の鉄筋コンクリート造りの建物は、1928年（昭和3年）に竣工したもので、文部省の技手であった福満繁記によって設計されました。戦時中も観測は続けられ、陸軍に気象情報を提供していました。戦後は無線や気象衛星データの中継局としても利用されましたが、自動化とリモートセンシング技術の発展により、1976年（昭和51年）には完全無人化され、2001年（平成13年）に気象庁の観測所としての役割を終えました。

気象庁閉鎖後、数年間は観測が行われない時期がありましたが、筑波大学は筑波山で蓄積された100年を超える気象データとその観測地点の重要性に着目。2006年1月、大学内のプロジェクトとして観測を再開し、施設の継承を果たしました。この再開はメディアでも大きく報じられ、気象関係者を中心に高い関心を集めました。2012年には筑波大学計算科学研究センターの事業となり、研究活動も本格化。そして2016年4月、筑波山神社と筑波大学による共同運営体制へと移行し、現在に至ります。この連携強化により、観測データの公開や、将来的にはつくば駅前などでの気象情報提供も検討されています。

建築

現在の観測所建物は、1928年に建てられた鉄筋コンクリート造りの2階建（一部3階建）です。設計は当時の文部省建築課の福満繁記が手掛けました。外観はスクラッチタイル貼りで、縦長の窓と鎧戸、直方体を組み合わせた構成が特徴で、全体的に垂直線が強調されたデザインです。南玄関の欄間や3階窓には半円形が取り入れられています。建物内部には、アール・デコ風の手摺りや、霞ヶ浦の帆引き船が描かれたステンドグラスが嵌め込まれた欄間など、当時の凝った装飾が残されています。内部構成は、1階に観測室や機械室など、2階に応接間や研究室などが配置されています。ただし、現状では老朽化が進み、天井や壁に損傷が見られる状態です。

所在地とアクセス

筑波山神社・筑波大学計算科学研究センター共同気象観測所は、筑波山神社の奥の院に隣接しています。一般公開は原則行われていませんが、将来的には気象観測の歴史などを紹介する展示室の設置構想も存在します。アクセスは、つくばエクスプレスつくば駅からバスと筑波山ケーブルカーを乗り継ぎ、山頂駅から徒歩約15分です。

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