筬島駅

筬島駅：歴史と自然に抱かれた宗谷本線の一駅

北海道の北部に位置する中川郡音威子府村。その地に佇む筬島駅は、北海道旅客鉄道（JR北海道）宗谷本線に属する無人駅です。1922年（大正11年）11月8日、天塩線の音威子府駅～誉平駅間の開通とともに開業しました。当初は一般駅として多くの旅客や貨物を扱い、地域の重要な交通拠点として賑わいを見せていました。

その後、幾度かの線路名称変更を経て、1930年（昭和5年）には宗谷本線に編入されます。1977年（昭和52年）に貨物取扱いを終了し、1984年（昭和59年）には荷物取扱いが終了。さらに同年11月10日には駅員無配置駅となり、出改札要員も廃止されました。1986年（昭和61年）には交換設備を廃止し完全に無人化。1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化に伴い、JR北海道の駅となります。

1980年代後半から1990年代前半にかけては駅舎が改築され、貨車駅舎となりました。その後も、2012年には駅舎外壁の改修工事なども行われています。

近年では利用者数の減少が深刻な問題となり、2016年7月にはJR北海道から廃止の意向が示されました。しかし、音威子府村の強い存続要望や、村による維持管理費の負担などを経て、2017年4月以降はJR北海道が当面の間費用を負担して存続させることになりました。そして、2020年12月にはJR北海道から2021年度より音威子府村による維持管理に移行することが発表され、現在に至ります。

存続への道のり：地域とJR北海道の協働

筬島駅の存続は、決して容易ではありませんでした。利用客の減少という現実を前に、JR北海道は廃止を検討せざるを得ない状況でした。しかし、音威子府村は、将来的な通学利用の可能性や、地域のシンボルとしての存在意義を訴え、存続に向けてJR北海道と粘り強い交渉を重ねました。

その結果、村による維持管理費の負担、駅舎の修繕、除雪作業など、維持管理に関する具体的な協定が締結され、筬島駅は存続することとなりました。この取り組みは、地方の小さな駅と地元自治体の連携が、地域の交通を維持する上でいかに重要であるかを示す好例と言えるでしょう。

駅名の由来：アイヌ語の響き

駅名の「筬島」は、駅周辺の地名に由来します。元々は「物満内」と呼ばれていたこの地ですが、駅名としては「筬島」が採用されました。これは、事務上の簡素化を目的とした改称だったと言われています。

「筬島」の語源は諸説ありますが、アイヌ語に由来するとの説が有力です。「砂の中を流れる川」や「崖の端にある川」などを意味する語が転訛したものだとされています。その由来を巡る様々な説は、この土地の歴史とアイヌ文化との深い繋がりを物語っています。

駅構造と周辺環境：静寂と自然美

筬島駅は、単式ホーム1面1線の地上駅です。かつては列車交換が可能な2面2線のホームを有していましたが、無人化に伴い現在の構造となりました。駅舎は、旧駅舎の基礎の上に設置された、ヨ3500形車掌車を改造したものです。トイレも設置されており、簡素ながらも機能的な造りとなっています。

駅周辺は、豊かな自然に恵まれた静かな環境です。すぐ近くには、彫刻家砂澤ビッキの作品を展示する「エコミュージアムおさしまセンター BIKKYアトリエ3モア（砂澤ビッキ記念館）」があります。また、国道40号や天塩川、筬島大橋なども近くにあります。「北海道命名之地」の碑もあり、探検家松浦武四郎が北海道の名を考案したとされる場所も近隣に位置しています。

利用状況と未来：地域の交通を支え続ける

現在、筬島駅は宗谷本線の中でも最も利用者の少ない駅の一つです。しかし、その存在は、地域住民にとって大切な交通手段であり、地域のシンボルでもあります。音威子府村による維持管理体制が確立されたことで、今後も地域住民の生活を支え、静かに時を刻み続けることでしょう。

筬島駅は、歴史と自然、そして地域住民の強い思いが凝縮された、北海道の小さな駅です。訪れる人に、静かな感動と、歴史の息吹を感じさせる場所と言えるでしょう。

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