篠原 (神戸市)

兵庫県神戸市灘区篠原：歴史と現状

神戸市灘区の中央部、都賀川の上流域に位置する篠原は、住居表示が未実施の地域も残る、歴史深い地域です。北東部は六甲山町、東部は順に大月台、篠原台、篠原伯母野山町、南は篠原本町、西は長峰台、大石と隣接しています。

篠原という地名は、古くからこの地域に存在し、現在も「篠原北町」「篠原中町」「篠原本町」「篠原南町」「篠原台」「篠原伯母野山町」といった町名にその名を残しています。興味深いことに、地元住民は「シノハラ」ではなく「シノワラ」と呼ぶそうです。2020年（令和2年）の国勢調査によると、世帯数は51世帯、人口は246人（男性77人、女性169人）です。郵便番号は657-0002です。

地名の由来と歴史

地名の由来については諸説ありますが、楠原佑介らの『古代地名語源辞典』では、「シノ（濡れたところ）・ハラ（原）」から、湿地を意味するとされています。一方、『灘の町名』では、大石川（六甲川）沿いの笹薮の多かったことに由来すると記されています。

中世には都賀荘に属し、「しの原」と呼ばれていました。本町から中町にかけての「満所」という小字名は、都賀荘の政所があったことを示唆しています。荘官を務めた若林氏は、藤原摂関家の時代に大和国から移り住んできたとも、古くからこの地の豪族だったとも伝えられていますが、詳細は不明です。『神戸の町名 改訂版』では、篠原本町の厳島神社に祀られている兎名足宮が、応安3年（1370年）に大和国添上郡佐保村から勧進されたことを、大和との繋がりを示す証拠の一つとして挙げています。

文禄年間の検地では篠原村として独立し、片桐貞隆の所領となりましたが、天正19年（1591年）の村高帳や「正保郷帳」によると、実際には貞隆の与力であった西川八右衛門の知行地だったようです。江戸時代中期には、篠原村山田のうち20石ほどが下総国古河藩土井氏の所領となり、残りは天領となりました。

かつての篠原村には、政所の他に、古屋敷、元屋敷、的掛け、的場、宿の宮、東殿といった小字名が存在していました。この地域に伝わる俚謡には、「篠原すぎたるなんじゃいな　しのわらすぎたる寺三軒　八幡すぎたるなんじゃいな　やわたにすぎたる地車神輿　高羽すぎたるなんじゃいな　たこうにすぎたる女の子」という歌詞があり、「寺三軒」とは、祥龍寺、慶隆寺、光専寺を指しています。慶隆寺は、その後、高羽の光台寺と合併して慶光寺となりました。

篠原は、歴史と自然が共存する地域です。古くからの地名や、中世の荘園、近世の所領、そして現代の人口統計まで、様々な要素が複雑に絡み合い、独特の地域性を形成しています。これからも、その歴史と文化を大切に守り、未来へと繋いでいくことが重要と言えるでしょう。

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