米倉健司

米倉 健司

日本のプロボクシング史において、選手そして指導者として多大な功績を残した人物、それが米倉健司氏（1934年5月25日 - 2023年4月20日）です。本名は米倉健治、プロボクサーとしては米倉健志のリングネームを使用しました。福岡県直方市に生まれた米倉氏は、現役時代には日本フライ級およびOBF（現OPBF）東洋太平洋バンタム級の二つの王座を獲得し、引退後は自身が設立したヨネクラボクシングジムから多くの世界王者を輩出しました。

アマチュア時代

米倉氏のボクシングキャリアは、福岡県立福岡高等学校在学中に始まりました。アマチュアボクシングで才能を開花させた氏は、インターハイに出場。その後、明治大学経営学部に進学し、在学中に全日本アマチュアボクシング選手権大会のフライ級で優勝という輝かしい実績を残します。これらの活躍が認められ、1956年にはメルボルンオリンピックの日本代表として出場。世界の舞台で3回戦まで勝ち進む経験を積みました。大学卒業後の1957年には、アメリカ合衆国シアトルで開催された世界ゴールデングローブ大会にも日本代表として参加し、国際的な経験をさらに深めました。

プロボクサーとして

アマチュアでの実績を引っ提げ、米倉氏は1958年に日興ジム所属としてプロへ転向します。デビュー戦は6月27日、木村七郎選手との8回戦でした。この試合に4回負傷判定で勝利した米倉氏は、日本ボクシングコミッション（JBC）において初のA級（8回戦）デビューという歴史的な記録を樹立しました。

プロ転向から間もない1959年1月4日、米倉氏は福本篤人選手を破り、プロわずか5戦目にして日本フライ級王座を獲得しました。これは当時の国内最短記録として刻まれましたが、その後、この記録は複数回更新されていきます。同年8月には、アルゼンチンの強豪、パスカル・ペレスが保持する世界フライ級王座に挑戦しましたが、惜しくも敗退。この世界挑戦後、9月10日には日本フライ級王座を返上しました。

階級をバンタム級に上げ、1960年1月6日にはフィリピンのレオ・エスピノサ選手に勝利し、OBF（現OPBF）東洋バンタム級王座を獲得します。同年5月23日には、メキシコのジョー・ベセラが持つ世界バンタム級王座に挑み、二度目の世界挑戦を果たしましたが、判定負けを喫し、世界の頂点には届きませんでした。しかし、その後は東洋バンタム級タイトルを5度にわたって防衛するなど、選手としての実力を長く維持しました。1962年10月29日、青木勝利選手とのタイトルマッチに12回判定で敗れ王座を失い、これを機に現役引退を表明しました。

指導者、そしてジム経営者として

現役を退いた米倉氏は、その経験と情熱を次世代の育成に捧げます。1963年、自身の名を冠したヨネクラボクシングジムを設立しました。このジムは、日本のプロボクシング界における名門として知られるようになり、柴田国明氏、ガッツ石松氏、中島成雄氏、大橋秀行氏、川島郭志氏という5人の世界王者を筆頭に、30人以上の日本および東洋太平洋王者を育て上げる偉業を成し遂げました。

米倉氏の指導哲学は、一般的なセオリーに囚われず、選手の個性を見極めることを重視していました。長身だからアウトボクサー、といった定石に必ずしも従うのではなく、一人ひとりの性格や適性に合わせたボクシングスタイルを見つけ出し、その選手の持ち味を最大限に引き出すことに重きを置いていたといいます。また、指導者としては多忙な中でも、70代を迎えてもなお自らパンチングミットを持ち、ボクサーたちと汗を流しながら直接指導にあたるなど、常に現場での指導を大切にしていました。

ジム経営と並行して、米倉氏は日本のボクシング界の要職も歴任しました。1986年から1989年にかけては全日本ボクシング協会の会長を務め、業界全体の発展に貢献。その功績は広く認められ、1995年3月29日にはスポーツ功労賞を授与されています。晩年には日本プロボクシング協会の常任相談役や日本ボクシングコミッションの役員実行委員としても活動を続けました。

2008年には、所属選手の不祥事によりJBCから厳重注意を受ける事態がありましたが、米倉氏は対象選手を解雇しない意向を示し、師弟の絆を重んじる姿勢を示しました。しかし、高齢と体調の悪化を理由に、2017年4月27日、同年8月末をもってヨネクラジムを閉鎖し、第一線から退くことを発表。長きにわたる指導者生活にピリオドを打ちました。

最期

日本のボクシング界に多大な貢献を果たした米倉健司氏は、2023年4月20日に88歳でその生涯を閉じました。選手として、そして指導者として、彼の名前は日本のボクシング史に深く刻まれています。

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