粟島神社 (米子市)

粟島神社の概要

粟島神社（あわしまじんじゃ）は、鳥取県米子市の彦名町に位置する古い神社で、少彦名命を祭神としています。この神社は淡島神社の一つであり、その歴史は多くの伝承とともに語り継がれています。

歴史

社の創建年は記録が失われているため不明ですが、過去には頻繁な火災により重要な資料が消失してしまいました。現在の社殿は、基礎となる境内が36メートルの明神山に位置しています。この山はかつて中海の小島であり、全体が神聖視されていました。伝説によると、創建当初は山のふもとに社殿があったとされています。
戦国時代、尼子氏が伯耆に侵攻した際に社殿は焼失しましたが、再建され、尼子氏から社領が寄進されました。その後、江戸時代に元禄期に再び社殿が焼失し、翌年には新たに山の頂上に移設されました。

その後、宝暦期になると周辺の干拓工事により、粟島は「彦名干拓地」と地続きとなり、地域の発展に寄与しました。江戸時代には「粟島大明神」として信仰を集め、明治維新に伴い周辺の神社を合祀し、粟島神社へと名称が改められました。近年では、昭和11年に社殿が再構築され、現在の姿を保っています。

伝承と由緒

733年（天平5年）に書かれた『伯耆国風土記』の逸文には、少彦名命がこの地で粟を撒き、実った穂に乗って常世の国へ渡ったという物語が記されています。また、『日本書紀』にも同様の逸話があり、少彦名命が淡島（粟島）で穂に弾かれて天界へ帰ったとされています。この神話は、地域の名前の由来ともなっています。

民間伝承では、少彦名命は海に落ちた後に空豆の皮で船を作り、粟島に漂着しました。そこでオオクニヌシと知り合い、天界に戻るため粟の茎を使って飛び立つという物語も語られています。

地名の由来

「米子」という地名の起源には、粟嶋の分限者が88歳で初めて子を授かったことに由来しています。この話は、この地域にゆかりのある伝承として人々に受け継がれています。

地元の伝説

粟島には他にも伝説があります。ある地元の漁師の娘が人魚の肉を食べて不老不死となり、静の岩屋で800年間の隠遁生活を送り、「八百比丘尼」として知られるようになったとされています。

自然の宝

粟島神社はその周辺地域においても自然環境が特に恵まれています。周囲の干拓地の中では例外的に、島全体にはスダジイを始めとする照葉樹林が形成されており、さまざまな植物が繁茂しています。この原始林は「粟嶋神社社叢」として鳥取県の天然記念物に指定されています。

名所としての粟嶋

文政期には、米子の文人が粟嶋を題材にした和歌を詠み、「米子八景」の一つとされました。大正期には「錦海八景」が設けられ、粟嶋から見る秋の月夜を「粟嶋秋月」として讃えられています。これにより、粟嶋は米子市の名勝としての地位を確立しています。

粟島神社は、歴史、伝説、自然が織りなす風景として、多くの人々に親しまれ、訪れる人々に古き良き伝説と美しい自然を体験させてくれる場所です。

もう一度検索