精興社

株式会社精興社について

株式会社精興社は、独自の明朝体である「精興社タイプ」で広く知られる日本の印刷会社です。特に、その書体の美しさと活版印刷へのこだわりは、業界内でも高く評価されています。創業は1913年（大正2年）に遡り、創業者である白井赫太郎によって東京活版所として設立されました。当初より印刷の品質向上を目指し、君塚樹石に依頼して新しい書体を開発、「精興社タイプ」が誕生しました。

精興社タイプの誕生

「精興社タイプ」は、1930年から3年という歳月をかけて、君塚樹石の協力のもと開発されました。この書体の最大の特徴は、細身でやや小ぶりであり、独特のカーブを持つひらがなです。活版印刷の時代には、一度使用した活字を再利用せずに再度鋳造することで、常に高品質な印刷物を制作することに成功しました。しかし、1995年8月に活版印刷は終了し、その技術はデジタルへと移行しました。

精興社タイプの展開

長らく活版印刷で提供されてきた「精興社タイプ」は、活版印刷の衰退に伴い、写植機への搭載を経て、DTPフォントへと進化しました。現在では、OpenTypeフォントとして利用可能ですが、精興社内での印刷でのみ使用が許可されており、一般への販売はされていません。精興社書体の詳細な情報については、『青梅市文化財総合調査報告 活版印刷技術調査報告書 改訂版』にベントン母型の一覧が掲載されています。

精興社の事業内容

精興社は、岩波書店、福音館書店、筑摩書房など、多くの出版社から信頼を得ており、書籍のDTPや印刷を手がけています。長年にわたり培ってきた高い技術力と、印刷に対する真摯な姿勢は、出版業界に欠かせない存在となっています。

事業所

精興社の事業所は以下の通りです。

本社・青梅工場（東京都青梅市）
神田事業所（東京都千代田区神田錦町）
朝霞工場（埼玉県朝霞市）

参考文献

精興社に関する研究や記事は、以下のようなものがあります。

『明星大学日本文化学部紀要』連載「精興社活字書体とその組版技術-岩波書店「日本古典文学大系」を主題にして」（1993‐1996／執筆者＝森啓）
『レタリング・タイポグラフィ』所収「書物の印刷に大きな功績をあげた精興社書体―白石赫太郎と君塚樹石の遺したもの」（2002／武蔵野美術大学出版局／執筆者＝森啓）
青梅市立郷土博物館『特別展 活版印刷技術展』青梅市立郷土博物館、2003年。
『書き文字から印刷文字へ 活字書体の源流をたどる』（2008／女子美術大学）

外部リンク

株式会社精興社

精興社は、その独自の書体と高い印刷技術を通じて、日本の出版文化に貢献し続けている企業です。

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