紅いコーリャン

紅いコーリャン：鮮烈な映像美と壮大な愛憎劇が織りなす中国映画史に残る傑作

1987年、中国で誕生した『紅いコーリャン』（原題：紅高粱）は、張芸謀監督のデビュー作にして、中国映画、ひいては世界映画史に燦然と輝く金字塔的作品です。主演は、張芸謀監督作品に数多く出演し、その独特の世界観を体現する女優、鞏俐。原作はノーベル文学賞を受賞した莫言の小説『赤い高粱』です。

鮮烈な映像美と神話的要素

この映画最大の特徴は、なんといってもその鮮烈な映像美です。「紅」を基調とした色彩感覚は、見る者の心を掴んで放しません。単なる映像の美しさだけでなく、物語に神話的な要素が織り込まれている点も特筆すべきでしょう。壮大な自然、力強い人間ドラマ、そして時に残酷なまでにリアルな描写が絶妙に混ざり合い、観る者を圧倒的な世界へと誘います。

この鮮やかな色彩表現は、後の張芸謀監督と鞏俐のコンビによる作品、『菊豆』『紅夢』『上海ルージュ』といった作品にも受け継がれ、彼ら独自のスタイルとして確立されていくことになります。

波紋を呼んだ社会現象と高い評価

『紅いコーリャン』は、中国国内においても大きな話題を呼びました。その反響は「紅いコーリャン現象」と呼ばれるほどで、賛否両論が巻き起こったことも事実です。しかしながら、その革新的な表現や、中国の社会状況、歴史を深く切り取った物語は、高い評価を受け、数々の賞を受賞しました。

具体的には、第38回ベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を受賞。さらに、中国映画界における権威ある賞である百花奨と金鶏奨でも最優秀作品賞を受賞する快挙を達成しました。これらの受賞は、本作が中国映画史におけるランドマーク的作品であることを示しています。

1930年代末の中国山東省を舞台にした壮絶な物語

物語は、1930年代末の中国山東省を舞台に展開されます。主人公は、語り手の祖母である九児。彼女は、ラバ1頭と引き換えに、年の離れたハンセン病を患う造り酒屋の男のもとへ嫁がされます。

嫁入り行列の途中で強盗に襲われる九児。しかし、担ぎ手である余占鰲に助けられます。そして、再び嫁ぎ先へ向かう途中、今度は余占鰲自身によって襲われます。それは、強盗ではなく、九児への強い想いを秘めた行為でした。コーリャン畑という、情熱的な赤い風景の中で、2人は結ばれます。

夫が行方不明となり、造り酒屋を継いだ九児は、余と結婚し、コーリャン畑で結ばれた日に身ごもった子供、豆官を育て、幸せな日々を過ごします。しかし、その幸せな日々は、日本軍の侵攻によって打ち砕かれるのです。

キャストとスタッフ

本作の成功には、才能あふれるキャストとスタッフの貢献が不可欠でした。鞏俐による圧倒的な存在感と、姜文による男性的で力強い演技は見事なものでした。また、張芸謀監督をはじめとするスタッフ陣の卓越した技術と芸術性も、この映画の完成度に大きく貢献しています。

30周年記念デジタルリマスター版の上映

2018年には、公開30周年を記念して2Kデジタル・リマスター版が上映されました。これは、より鮮明で美しい映像で『紅いコーリャン』を鑑賞できる機会として、多くの映画ファンを魅了しました。

『紅いコーリャン』は、単なる映画作品を超えた、中国の歴史、文化、そして人間の強さと脆さを描いた壮大な物語です。鮮烈な映像と重厚な物語は、現代においても色褪せることなく、多くの人の心に響き続けるでしょう。

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