紫尾神社 (出水市)

紫尾神社の概要

紫尾神社（しびじんじゃ）は、鹿児島県出水市高尾野町唐笠木に位置する神社です。かつては「紫尾権現」と呼ばれ、薩摩郡さつま町紫尾にある同名の神社とともに、国史に見える神社であるとされています。この神社は、地域の人々にとって重要な信仰の場であり、歴史と文化が息づく場所です。

祭神

紫尾神社は、瓊瓊杵尊（ニニギノミコト）、彦火火出見尊（ヒコホホデミノミコト）、鵜葺草葺不合尊（ウガヤフキアエズノミコト）のいわゆる「日向三代」を祭神としています。しかし、古くは「湯谷権現」とも呼ばれ、熊野権現と同一の祭神、すなわち伊弉冉尊（イザナミノミコト）、事解男命（コトサカノオノミコト）、速玉男命（ハヤタマオノミコト）を祀っていたという説もあります。このことから、紫尾神社は多様な信仰の歴史を内包していることがうかがえます。

歴史

紫尾神社の創建年代は明確ではありません。しかし、かつては紫尾山の山頂近くに上宮があり、度重なる暴風による倒壊や祭祀の不便さから、現在の出水市とさつま町の2箇所に里宮として分祀されたと伝えられています。これらは「下宮」と呼ばれていましたが、さつま町柏原の古紫尾神社を下宮とする場合は「中宮」とも呼ばれます。これらの事実は、紫尾山を中心とした山岳信仰が神社の成立に深く関わっていたことを示唆しています。

『日本三代実録』には、貞観8年（866年）と貞観10年（868年）に薩摩国の「紫美神」が昇叙されたという記述があります。この「紫美神」がどちらの紫尾神社を指すのかについては議論があり、貞観8年の記述はさつま町の紫尾神社、貞観10年の記述は出水市の紫尾神社を指すと解釈されています。このことから、二つの紫尾神社がそれぞれ歴史的に重要な役割を担っていたと考えられます。

江戸時代には、薩摩藩主島津氏から篤く尊崇され、藩主から毎年祭祀料として3斗5升が寄進されていました。これは、紫尾神社が藩内でも重要な神社として位置づけられていたことを示しています。

明治5年（1872年）には県社に列せられ、近代以降も地域の信仰の中心としてその役割を果たしています。

祭事

紫尾神社では、毎年秋祭りに「兵六踊り（ひょうろくおどり）」が奉納されます。この踊りは、鹿児島県の指定民俗文化財であり、大石兵六という薩摩藩士が狐を退治したという話を舞踊化したものです。地域の人々によって大切に受け継がれ、祭りの重要な要素となっています。

参考文献

『神社名鑑』、神社本庁、昭和38年
『神道大辞典』（縮刷復刻版）、臨川書店、昭和44年 ISBN 4-653-01347-0
『角川日本地名大辞典46鹿児島県』、角川書店、昭和58年

外部リンク

高尾野町の兵六踊（出水市役所）

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