細川尚春

細川尚春：淡路守護家最後の当主、その生涯

細川尚春（ほそかわ ひさはる）は、室町時代後期から戦国時代にかけての武将であり、淡路国守護を務めた細川淡路守護家の7代目当主です。彼の生涯は、室町幕府の衰退と戦国時代の幕開けが交錯する激動の時代を反映しています。

生い立ちと家督相続

尚春は細川成春の子として生まれました。元服時期は、足利義尚から偏諱を受けていることから、義尚が将軍職にあった1473年から1489年の間と考えられ、おおよそ1460年代後半から1470年代の生まれと推測されます。文明17年（1485年）に父の死により家督を継ぎ、淡路守護となりました。

細川京兆家の内紛と尚春

当時の幕府・管領であった細川政元は、京兆家の全盛期を築きましたが、3人の養子を迎えたことで、後に家督争いが勃発します。永正2年（1505年）、尚春は政元の命により讃岐国に侵攻し、細川成之や三好之長らと戦いますが、敗北を喫します。永正4年（1507年）に政元が暗殺されると、尚春は他の養子である細川高国や細川澄元らに味方し、澄之を討ち滅ぼすことに貢献しました（永正の錯乱）。

高国との対立と挙兵

しかし、その後、尚春は京兆家の実権を握った高国と対立するようになります。永正8年（1511年）、澄元が高国に対して和泉国で挙兵すると、尚春もこれに呼応して淡路で兵を挙げ、摂津国に侵攻しますが（芦屋河原の合戦）、敗れて淡路へ撤退します。その後、形勢不利と判断した尚春は高国に降伏しますが、将軍足利義稙と高国は、阿波守護を尚春の嫡男である彦四郎に与えることを条件に、尚春を自派に取り込むことに成功しました。

三好氏の侵攻と最期

阿波守護の件は、細川成之・之持を相次いで失った細川讃州家との間に新たな火種を生むことになります。永正14年（1517年）9月、三好之長の淡路侵攻を受け、尚春は敗れて和泉・堺に逃亡します。そして永正16年（1519年）5月11日、阿波国において之長によって殺害されました。

その後

嫡男の彦四郎は、父の死後、等持院の戦いで之長追討に功績を挙げたため、家督を継いだ可能性があります。しかし、淡路は細川讃州家や三好氏の支配下に置かれることになり、細川淡路守護家は事実上断絶しました。

細川尚春の生涯は、室町幕府の権威失墜と戦国時代の到来という、時代の大きなうねりの中で翻弄されながらも、自らの勢力を維持しようと奔走した地方領主の姿を象徴しています。

参考文献
長江正一『三好長慶』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1989年4月（原著1968年）。ISBN 978-4-642-05154-5。

関連項目
船岡山合戦
養宜館 - 城主となっていた。
畿内・近国の戦国時代

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