芦屋河原の合戦

芦屋河原の合戦（あしやがわらのかっせん）

芦屋河原の合戦は、戦国時代初期の永正8年（1511年）に、摂津国武庫郡の鷹尾城と芦屋河原周辺を舞台に繰り広げられました。この戦いは、細川氏の内紛「両細川の乱」が背景にあり、細川澄元軍と細川高国・大内義興連合軍が激突しました。別名として「葦屋河原の戦い」や「鷹の尾城の戦い」とも呼ばれています。

開戦までの経緯

永正4年（1507年）の永正の錯乱以降、細川京兆家の家督をめぐる内紛が激化していました。永正6年（1509年）の如意ヶ嶽の戦いでは高国・大内連合軍が勝利し、高国が京兆家の当主となりますが、澄元は阿波に退き、再起を期していました。

永正8年（1511年）5月、鷹尾城の築城を巡り小競り合いが発生します。高国が瓦林正頼に築城を命じたことがきっかけでした。鷹尾は阿波から京へ向かう上で重要な地点であり、澄元の進軍を阻止する意図がありました。また、西国との交通の要衝であり、肥沃な灘筋を抑える狙いもあったと考えられます。

しかし、鷹尾周辺の灘五郷は、武家の封建権力に抵抗する惣の勢力下であり、権門の荘園であることを理由に守護の命令にも従いませんでした。灘五郷には多くの地侍がおり、彼らが地域を支配していました。鷹尾城の築城は、灘五郷の反発を招き、本庄衆・西宮衆と同盟を結び、鷹尾城に対抗する動きを見せました。正頼はこれに対し、討手を差し向け、中心人物を討ち取ります。さらに、本庄衆に鷹尾城の外堀を築かせ、用水を制限するなどの圧力を加えました。これに反発した本庄衆は、灘五郷衆の応援を得て鷹尾城を攻撃しますが、正頼の軍勢に撃退されます。

澄元はこの事態を受け、挙兵を決意します。前将軍足利義澄と連携し、四国の兵を集めて京を挟撃する計画を立てます。細川政賢と細川元常を総大将とし、7月7日に堺に上陸、深井城に陣を構えました。高国は池田氏、伊丹氏ら摂津の国人衆2万に出陣を命じ、7月13日に深井城を攻撃しますが、敗北し、澄元軍は中嶋城まで進軍しました。

戦況

淡路守護の細川尚春が兵庫に上陸したとの知らせを受けた正頼は、高国に報告。高国は柳本宗雄、波多野元清ら3千の援軍を派遣し、芦屋浜に布陣させます。正頼は鷹尾城を中心に山方を固めました。尚春軍には灘五郷の地侍衆が加わり、7月26日に戦闘が開始されました。芦屋川の河原や山方で激戦が繰り広げられ、瓦林新五郎が鷹尾城の外城を落城させるなどの動きもありました。しかし、正頼は尚春軍を撃退し、追撃戦の末、有馬郡湯原村まで追い払いました。

一方、播磨の守護である赤松義村は、澄元方に味方し、援軍を要請に応じて兵を集結させます。そして、尚春・灘五郷連合軍と合流し、8月5日に兵庫浦に到着。その総数は2万に達しました。8月8日には鷹尾城を包囲し、翌9日より総攻撃を開始。赤松軍は激しい勢いで攻め立て、城方は応戦しましたが、多数の死傷者が出ました。8月11日に火攻めの噂が流れると、正頼は開城を決意し、夜に伊丹城へ退却しました。

戦後の影響

赤松・尚春・灘五郷連合軍は鷹尾城を占領し、略奪の限りを尽くした後、城に火を放ちました。この事態に、三条西実隆は京の安危を憂慮する記録を残しています。赤松軍は正頼が逃れた伊丹城を包囲しますが、船岡山合戦での敗北の報を受け、包囲を解いて帰国しました。翌永正9年（1512年）、高国と赤松義村は和睦し、正頼は鷹尾城を奪還します。

船岡山合戦の勝利と義村との和睦により、高国・義興政権は安定し、高国と澄元の内紛は一時休戦状態となりました。

この戦いは、その後の歴史にも大きな影響を与え、戦国時代の勢力図を大きく塗り替える一因となりました。

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