細川高国

細川高国：戦国時代の動乱を生き抜いた武将

細川高国（ほそかわ たかくに）は、戦国時代の武将であり、室町幕府の31代管領を務めた大名です。細川京兆家15代当主として、摂津、丹波、山城、讃岐、土佐の守護を兼ね、室町幕府内で大きな権力を振るいました。

生い立ちと養子縁組

文明16年（1484年）、細川氏一門の野州家出身の細川政春の子として生まれました。後に、細川京兆家の当主であった細川政元の養子となります。この養子縁組は、細川氏の家督争いという複雑な背景の中で行われました。高国は、11代将軍足利義高（後の義澄）より偏諱を受け、高国と名乗りました。兄弟には晴国がおり、実子には稙国、養子には氏綱がいます。

権力闘争と台頭

養父である細川政元が暗殺されると、細川家は混乱に陥ります。この混乱期（永正の錯乱）を経て、高国は同じく政元の養子であった細川澄元を排除し、細川京兆家の家督と幕府の実権を掌握しました。その後も、両細川の乱と呼ばれる長期にわたる権力抗争が続きますが、最終的に澄元を打ち破り、将軍足利義稙を廃して足利義晴を擁立するなど、管領として幕政を主導し、京を中心とした畿内一帯に君臨しました。

しかし、細川氏の支配基盤である「内衆」と呼ばれる重臣たちは、京兆家の内紛によって疲弊し、対立を深めていきました。高国は外様である大内氏の軍事力を頼っていましたが、大内氏が帰国した後、支持基盤を固めることができませんでした。その結果、澄元の子である細川晴元に敗れ、自刃に追い込まれることとなります。

波乱に満ちた生涯

高国は、政元の3番目の養子として迎えられましたが、元服の順序は最も早かったとされています。これは、高国の名が将軍足利義高から与えられたものであることからもわかります。また、細川氏の連歌儀式「細川千句」では、野州家分を明応6年（1497年）頃から高国が主導していたことから、この時期に野州家の家督を譲られ、政元との養子縁組が解消されたという説もあります。軍記物『不問物語』には、高国が元服前に政元の養子となったことが記されており、養子縁組は高国の幼少期に行われたと考えられています。

永正4年（1507年）に政元が暗殺されると、高国は澄元を支持して澄之を討伐しました。しかし、大内義興が足利義稙を擁して上洛すると、高国は澄元に背いて義興と通じ、伊勢に逃れました。永正5年（1508年）には、仁木高長や伊丹元扶らと協力して京に侵攻し、澄元と将軍義澄を近江に追放しました。その後、高国は義稙から京兆家当主と認められ、管領に任じられました。

永正6年（1509年）には、澄元の重臣・三好之長の侵攻を受けましたが、大内義興と協力してこれを撃退しました。しかし、永正7年（1510年）の近江への再侵攻では、澄元方を支持する国人の反抗によって敗北を喫しました。永正8年（1511年）には、澄元勢が京に再侵攻しましたが、高国は船岡山合戦で勝利し、京を奪還しました。

永正12年（1515年）頃には、澄元勢の反撃に備え、芥川と西宮に城を築き、防衛体制を強化しました。永正15年（1518年）には、大内義興が帰国したため、高国は単独で政権を運営することになりました。しかし、永正16年（1519年）には、澄元らの侵攻を許し、翌年には近江坂本まで退却を余儀なくされました。

その後、将軍足利義稙が澄元と内通したため、高国は六角定頼や朝倉孝景らの支援を受け、再び挙兵しました。高国勢は之長を自害に追い込み、澄元を摂津に敗走させ、政権を奪還しました。永正17年（1520年）には、澄元が病死し、高国は事実上の天下人となりました。しかし、その後、高国は重臣を謀殺するなど、内部の引き締めを図りました。

永正18年（1521年）には、将軍足利義稙が京を出奔したため、高国は義澄の遺児である足利亀王丸（後の義晴）を擁立しました。義稙の死後、高国は管領として幕府を主導しました。

凋落と最期

大永5年（1525年）、高国は剃髪して道永と号し、家督を嫡子の稙国に譲って隠居しました。しかし、稙国が死去したため、再び管領として復帰しました。大永6年（1526年）には、重臣の香西元盛を謀殺したことがきっかけで、重臣やかつての敵対勢力から反発を招きました。

澄元の遺児・晴元や三好元長らに挙兵され、大永7年（1527年）には京を追われ、近江に逃れました。高国は朝倉孝景の支援を受けて上洛を試みましたが、翌年には再び近江に逃れました。享禄3年（1530年）には、柳本賢治が暗殺されたことを機に、浦上村宗と連携して京に進軍しました。

享禄4年（1531年）には、晴元の重臣・三好元長からの反撃で足止めされ、膠着状態に陥りました。その後、赤松政祐の裏切りに遭い、重臣を失った高国は、尼崎に逃走しました。そして、元長らの捜索によって隠れているところを発見され、6月8日に自害しました。享年48歳でした。

死後

高国の死後、尹賢は晴元によって殺害されました。高国派の残党は、高国の弟・晴国を擁立して晴元と戦いましたが、敗死しました。尹賢の子である氏綱は、高国の跡目を称して晴元を追い落としましたが、傀儡に過ぎず、実権のないまま死去し、高国系は断絶しました。

歴史学者の今谷明は、細川晴元・氏綱の管領任命を事実ではないとし、高国を室町幕府最後の管領としています。また、浜口誠至は、戦国期の管領は臨時職となっており、高国の時代には細川京兆家の権力と管領の地位は分離していたと指摘しています。

高国の系譜

父：細川政春
養父：細川政元
室：細川政賢娘
男子：細川稙国
* 養子：細川氏綱

高国は、数多くの家臣に偏諱を与えており、その中には、土佐の長宗我部国親や、出雲の尼子国久などがいます。

高国を演じた人物

俳優の安田顕が、BS時代劇「塚原卜伝」で細川高国を演じています。

まとめ

細川高国は、戦国時代の激しい権力闘争の中で、一時は天下人となった武将でした。しかし、内紛や裏切りによって失脚し、自害に追い込まれるという、波乱に満ちた生涯を送りました。彼の生涯は、戦国時代の複雑な権力構造と、その中で生き抜いた武将たちの悲哀を物語っています。

もう一度検索