経済的手法

経済的手法とは

経済的手法とは、市場のメカニズムを利用して、特定の政策目標を達成しようとするアプローチです。これは、単に規制を課すのではなく、経済的なインセンティブを通じて人々の行動を変化させ、結果として政策目標を達成することを目的とします。

具体例

外部不経済の内部化: 例えば、工場の排出ガスが環境汚染を引き起こす場合、その費用を排出者に負担させることで、排出を抑制します。
バッズ(bads)増税・グッズ(goods)減税: 環境負荷の高い製品や活動には増税し、環境に優しいものには減税することで、消費者の選択を誘導します。

概要

経済的手法は、市場の力を活用することで、より効率的に政策目標を達成することを目指します。具体的には、環境税、課徴金、排出量取引などの手法が用いられます。例えば、環境政策においては、環境負荷のような外部不経済を市場に反映させることで、最小の費用で環境負荷を削減できます。

対照的なアプローチとして、規制的手法があります。規制的手法は、政府が基準を定め、有害物質の排出などを管理・監督するものです。経済的手法は、市場の力を利用するのに対し、規制的手法は政府の直接的な介入を伴います。

経済的手法の原理

外部費用の内部化

市場経済では、資源の効率的な配分は、生産にかかる費用と消費者が支払う価格が一致するときに実現します。しかし、現実には、生産活動にかかるすべての便益と費用が市場を経由するわけではありません。例えば、自動車の利用は、道路の維持費や大気汚染などの外部費用を生じさせますが、これらの費用は市場価格に反映されないことがあります。

経済的手法では、これらの外部費用を内部化します。つまり、外部費用を負担者に課すことで、市場価格に反映させ、過剰な生産や消費を抑制します。これにより、社会全体にとって最も効率的な資源配分が実現します。例として、自動車の利用者に、道路維持費や大気汚染の費用を負担させることが挙げられます。これにより、自動車の利用が抑制され、より効率的な公共交通機関への利用が促される可能性があります。

二重の配当

経済的手法には、環境負荷の高い選択肢の価格を上げる手法と、低い選択肢の価格を下げる手法があります。税や課徴金などの課税的手法は、導入時に政治的な困難を伴うことがありますが、「二重の配当」という利点があります。これは、環境税などが環境対策だけでなく、社会にもう一つの利益をもたらすというものです。例えば、炭素税の税収を社会保険料に充当することで、温室効果ガス排出抑制と雇用創出を同時に達成できます。

事例

経緯

以前は、工場などの固定排出源による環境問題が中心でした。規制的手法と経済的手法の併用により高い成果を上げてきました。しかし、近年では、自動車などの移動排出源による環境問題が深刻化しており、規制的手法だけでは対応が困難になってきました。そのため、市場原理を活用した対策が重要になっています。

OECDは、環境問題に対し、以下のような様々な手法を組み合わせることを提唱しています。

経済的手法: 税、課徴金、料金、取引可能許可証など。
規制的手法: 基準、免許、許可証、制限など。
自主的アプローチ: 交渉による合意、単独のコミットメントなど。
技術開発と普及に対するインセンティブ: 価格シグナル、研究開発支援など。
情報を基盤とする手法: データ収集、情報提供、教育など。
その他: ゾーニング、土地利用計画など。

手法例

税・課徴金・料金: 環境税（炭素税、ガソリン税など）、渋滞税などがあります。また、ノルウェーやスウェーデンなどでは、廃棄物の排出や農薬の使用に対する課税が行われています。シンガポールや上海市では、自動車の購入やナンバープレートに価格をつけることで、台数を調整しています。
京都メカニズム: 排出量取引、クリーン開発メカニズムなどがあります。
* デポジット: 廃棄物の回収を促進するために利用されています。

また、補助金制度や公共交通機関の利用促進策も、経済的手法の一部として活用されています。

まとめ

経済的手法は、市場の力を活用して、効率的に政策目標を達成するための強力なツールです。環境問題をはじめとする様々な社会問題の解決に貢献することが期待されます。ただし、経済的手法は万能ではなく、規制的手法やその他のアプローチと組み合わせて、最適な政策ミックスを形成することが重要です。

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