結膜

目を保護する重要な組織である結膜（けつまく、英語: conjunctiva）は、眼球の表面にある強膜（いわゆる白目）の前方部分と、上下まぶたの裏側全体を覆っている薄く透明な膜です。この膜が存在することで、眼球とまぶたの間が滑らかになり、目の動きがスムーズに行われます。

組織構造

結膜は主に、複数の層からなる上皮細胞と、その下にある固有層（結合組織）で構成されています。上皮層は、場所によって非角化重層扁平上皮や重層円柱上皮といった異なる種類の細胞が組み合わさってできており、特に粘液を分泌する杯細胞が点在しています。この粘液は、目の表面の潤滑に不可欠です。固有層には、組織に栄養を運ぶための血管、組織を支える強固な繊維組織、そして免疫機能に関わるリンパ管などが豊富に分布しています。また、結膜の表面近くには、色素細胞であるメラニン細胞や、免疫応答を担うリンパ球といった細胞も見られます。

機能

結膜の主な機能の一つは、目の表面を適切に潤し、保護することです。杯細胞から分泌される粘液と、結膜固有層に少量存在する副涙腺からの涙が混ざり合い、涙液層の一部を形成して目の乾燥を防ぎます。これにより、まばたきの際に眼球とまぶたがこすれるのを和らげます。さらに、結膜は外界から侵入しようとする細菌やウイルスなどの微生物に対する物理的なバリアとして機能するだけでなく、固有層内のリンパ球などの免疫細胞が免疫監視機構として働き、異物や病原体を排除する役割も担っています。

解剖と神経支配

解剖学的には、結膜はその位置によって大きく3つの部分に分けられます（眼球結膜、円蓋部結膜、瞼結膜）。それぞれの部分が眼球とまぶたの特定の領域を覆っています。結膜の感覚は、主に三叉神経から派生する知覚神経によって支配されています。この神経支配は複数の枝に分かれており、結膜全体からの痛み、かゆみ、異物感といった感覚を脳に伝える役割を果たしています。

疾患と障害

結膜は常に外部環境にさらされているため、様々な要因による刺激や病原体の影響を受けやすく、多岐にわたる疾患や障害が発生しやすい組織です。特に、感染、化学物質による刺激、アレルギー反応、目の乾燥などが結膜のトラブルの原因となります。角膜とも近接しているため、しばしば同時に影響を受けることがあります。

炎症: 最も一般的な結膜の疾患は炎症であり、これは「結膜炎」と総称されます。細菌やウイルスによる感染、あるいはアレルギー反応や自己免疫疾患などが原因で起こり、目の充血、目やに、かゆみ、痛みを伴います。特にウイルス性結膜炎の一部は感染力が強く、「はやり目」として知られています。
刺激による反応: 大気汚染物質（例: 揮発性有機化合物 - VOC）への曝露や、ドライアイによる目の乾燥など、物理的・化学的な刺激によっても結膜は炎症や不快感を生じます。
特定の感染症: レプトスピラ症のように全身に影響を及ぼす感染症が結膜に特有の変化を引き起こすこともあります。レプトスピラ感染では、著しい結膜の充血（発赤）や、むくみ（結膜浮腫）が見られることがあります。また、特定の細菌やウイルスによる慢性感染は、結膜の瘢痕化を引き起こし、トラコーマのような失明につながる疾患の原因となることもあります。
加齢に伴う変化: 年齢を重ねると、結膜の弾力性が失われ、特に眼球結膜が弛緩してたるみが生じることがあります。これを「結膜弛緩症」と呼び、たるんだ結膜が下まぶたに乗り上げたり、瞬きや眼球運動の際に邪魔になったりして、不快感やドライアイを引き起こすことがあります。
出血: 結膜の下にある小さな血管が破れると、「結膜下出血」が生じ、白目部分が真っ赤になります。通常、痛みや視力低下はなく、自然に吸収されます。
腫瘍: まれに、結膜組織に腫瘍が発生することもあります。これには、良性のもの、悪性化する可能性のある前がん状態、そして悪性のもの（悪性黒色腫など）があります。早期発見と適切な診断が重要です。

まとめ

結膜は、目の表面を保護し、潤いを保ち、免疫機能によって外部からの脅威から目を守るという、多岐にわたる重要な役割を担う組織です。その健康状態は、目の快適性や視覚機能に直結するため、日常的なケアや、異常を感じた際の速やかな眼科受診が推奨されます。

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