網地島ライン

網地島ライン株式会社（あじしまライン）

網地島ライン株式会社は、宮城県石巻市門脇町に本社を構える海運事業者です。石巻港と石巻市に属する離島である田代島、網地島、そして牡鹿半島の先端に位置する鮎川港を結ぶ定期旅客船航路を主に運航しています。離島における人々の暮らしを支える重要な生活航路であると同時に、近年は「猫の島」として知られる田代島への観光アクセスとしても広く利用されています。

設立経緯と歩み

同社は1978年、石巻と田代島・網地島を結んでいた友福汽船と、網地島漁業協同組合の船舶部門が統合して設立されました。石巻市や旧牡鹿町（現石巻市）も出資する第三セクター方式が採用されています。その後、2006年には、網地島と鮎川を結んでいた石巻市営航路を継承し、現在の運航体制が確立されました。

会社にとって最大の試練となったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。石巻港の社屋や待合室、関連事業の飲食店は津波により完全に流失するという甚大な被害を受けました。しかし幸いなことに、保有していた3隻の船舶は津波から免れました。震災発生直後には、海上保安庁による迅速な救助活動が行われ、乗船していた乗客や乗員が無事救出されています。

地震発生後、定期運航は一時休止を余儀なくされましたが、早期の再開を目指し、まずは同年3月24日から「マーメイド」を使用し、暫定的ながらも毎日1往復の運航が再開されました。本来の発着岸壁が被災したため、運航再開当初は応急的に復旧した石巻工業港の日和埠頭を使用していました。この困難な状況下での運航再開にあたり、同年3月末までは運賃を無料とする措置も講じられました。

その後、設備の復旧や新造船の導入が進みました。2018年12月には新造船「マーメイドII」が就航し、ダイヤ改正を実施。これに伴い、石巻港中央発着所（現在はこちらがメイン）の供用も開始され、全便が大泊港に立ち寄るようになりました。さらに2019年3月には高速船「シーキャット」が新たに加わり、旧型の「ブルーライナー」と「みゅう」が引退するなど、船舶の世代交代が進んでいます。

運航航路とサービス

現在の主な航路は以下の通りです。

石巻中央発着所 または 石巻門脇発着所 - 大泊港（田代島） - 仁斗田港（田代島） - 網地港（網地島） - 長渡港（網地島） - 鮎川港

通常ダイヤでは、石巻港からの往復便は1日に3便運航されています。特に利用客が増加する7月中旬から8月中旬の夏季期間中は、土曜・日曜・祝日およびお盆期間に限り、1日4往復に増便されます。

運航にあたってはいくつかの注意点があります。混雑状況によっては、石巻中央と門脇の発着所が変更されることがあります。また、臨時ダイヤや当日の天候によっては、田代島の大泊港に寄港しない場合もあるため、事前の確認が推奨されます。特に「猫の島」ブーム以降、行楽シーズンを中心に混雑が激しく、乗船券が売り切れてしまうこともあります（ただし、混雑時は同一ダイヤで2隻同時に運航することもあります）。同社の航路は乗船予約を受け付けておらず、原則として当日先着順での乗船となります。もし積み残しが発生した場合は、必要に応じて臨時便が運航されることもあります。臨時便の情報は船内や各島の有線放送で案内されるほか、運行状況に関する最新情報は、公式サイトではなく同社の公式X（旧Twitter）アカウントでリアルタイムに発信されています。

定期航路以外にも、離島住民の急患発生時には時間や昼夜を問わず緊急搬送に対応しています。また、仙台湾内でのクルーズや船舶チャーターといったサービスも提供しています。車両の航送も可能ですが、搭載できる台数には限りがあるため、こちらは完全予約制となっています。なお、大型車両の輸送はできません。

保有船舶

現在、網地島ラインでは主に以下の2隻が活躍しています。

フェリー「マーメイドII」
総トン数：113トン、航海速力：17ノット、定員：231名
車両航送も可能なフェリータイプで、生活物資輸送も担います。2018年12月より就航。
高速船「シーキャット」
総トン数：109トン、航海速力：25ノット、定員：220名
より高速な旅客輸送に特化しており、生活物資の一部輸送も行います。夜間は田代島に停泊し、夜間の急患搬送にも対応できる体制をとっています。2019年3月より就航。

これらの船舶は、かつて活躍した「マーメイド」（初代）、「ブルーライナー」、「みゅう」といった船からバトンを受け継いで、安全な航海を支えています。

アクセス

石巻中央発着所: JR石巻駅から徒歩約15分。事務所と待合室はマンションの2階にあります。
石巻門脇発着所: JR石巻駅からバス（門脇二丁目下車徒歩5分）またはタクシー、徒歩（約30〜40分）。無料駐車場があります。
鮎川港発着所: 鮎川港の観光桟橋に位置し、JR石巻駅や渡波駅から路線バスが利用できます。

網地島ラインは、離島と本土を結ぶライフラインとして、そして魅力的な島々への玄関口として、地域にとって欠かせない存在となっています。

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