綾川五郎次 (横綱)

綾川五郎次

綾川五郎次は、元禄16年（1703年）に生まれ、明和2年（1765年）1月23日（グレゴリオ暦では1765年3月14日）に亡くなったとされる江戸時代の大相撲力士です。現在の栃木県にあたる下野国の出身と考えられています。日本相撲協会において、彼は初代横綱とされる明石志賀之助に続く第2代横綱として公認されています。

実績と記録の食い違い

横綱力士碑には、綾川が享保2年（1717年）に大関へ昇進したとの記述が見られますが、これを裏付ける確たる証拠は現在のところ確認されていません。むしろ、実際に綾川の活躍が記録として残っているのは、それからかなり時代が下った寛保年間（1741年～1744年）のことです。具体的には、寛保3年（1743年）5月に開催された大坂・堀江での興行では東小結として、また同年に京都・二条河原で行われた興行では西関脇として出場していたことが記録に残されています。特に京都での興行では、当時無敵と謳われた強豪、阿蘇ヶ嶽桐右衛門を打ち破るという快挙を成し遂げたと伝えられており、その勝利によって周囲から「綾川さま」と大いに称賛されたといいます。彼は主に江戸相撲で活動していましたが、珍しく京都や大坂といった他の土地での興行でも人気を博した力士でした。

大関記録と横綱認定の根拠

興味深いことに、小結や関脇として土俵に上がった記録はあるものの、綾川が大関として出場したことを示す記録は、現代において確認されていません。それにもかかわらず、彼が歴代横綱の一人として数えられている主要な根拠は、寛政元年（1789年）に時の吉田司家が、後の横綱である谷風梶之助（2代）と小野川喜三郎に横綱免許を授与する際に、寺社奉行へ提出した上申書に記された一文にあります。この書類には、「過去に綾川と丸山という者にも（横綱）免許を与えたが、その記録は残念ながら火災によって失われてしまった」という趣旨の内容が記載されていたのです。

歴代横綱における位置づけと議論

現在の日本相撲協会では、綾川五郎次を明石志賀之助に次ぐ第2代横綱として公認しています。しかし、明石志賀之助と同様に、綾川についてもその実在性や業績を直接示す記録が極めて少ないため、両者とも実在が疑われる「伝説上の横綱」と見なされるのが一般的です。特に、実在が確実視される力士としては丸山権太左衛門がおり、初代明石、2代綾川、3代丸山と順序付けることに対して、綾川の活動時期や記録の不明瞭さから多くの疑問が呈されることがあります。

そのため、丸山権太左衛門を2代目、綾川五郎次を3代目とする説も一部には存在します。しかしながら、この説の場合、丸山の生年が正徳3年（1713年）であることが判明しているため、横綱力士碑に記載されている綾川の大関昇進とされる享保2年（1717年）の時点では、丸山はまだ数え年でわずか5歳ということになります。このような年齢的な観点から考察すると、綾川を第2代とする伝統的な説の方がより整合性が高いと考えられています。

結論として、綾川五郎次は記録が乏しく伝説的な側面が強い人物であり、その実像や歴代横綱としての正確な位置づけについては議論の余地が残されていますが、伝統的に、また横綱力士碑にも第2代横綱としてその名が刻まれ、語り継がれている大相撲史上の重要な存在です。

もう一度検索