繋年

『繋年』について

『繋年』（けいねん）は、清華大学のコレクションである「清華簡」から発見された、周代の歴史に関する記録を集約した貴重な歴史書です。この文献は、中国の古代歴史と文化の研究において極めて重要な役割を果たしています。

概要

『繋年』は、楚の粛王の時代に成立したとされ、成書の時期は『竹書紀年』よりも古いと推測されています。全138枚の竹簡から構成されており、一部に損傷が見られますが、全体的には良好な保存状態が確保されています。内容は23章に分かれており、西周の初期から戦国前期にかけての歴史を概観しています。

各章の内容を詳しく見ていくと、1章から4章では西周の興起と滅亡の過程が詳述されており、特に武王による殷の滅ぼしと周公の東征に関する出来事が中心となっています。続く5章から19章では春秋時代と戦国時代を扱い、最後の20章から23章では戦国初期の出来事が記されています。これらは、最終的には、戦国中期の楚の粛王時代までの出来事を網羅しています。

『繋年』の主な目的は、当時の諸国の状況やその発展の起源を記述することです。特に春秋時代や戦国時代初期に関する章では、記載されている事実の多くが他の伝世文献には見られず、古代史の空白を埋める重要な役割を果たしています。文中に記載されている情報は、『春秋左氏伝』や『国語』、『史記』などの既存の文献と照らし合わせることができ、その結果として伝世文献の訂正や補足が可能となります。このプロセスを通じて、周代の「三監」や「共和執政」の意味、平王の東遷、秦人の起源などの重要な問題に対する新しい解答が示されているのです。

学界における評価

『繋年』については、文献の性格や成立過程について学界で活発な議論が行われています。一部の学者は、「繋年」という名称が一時的なものであると指摘し、正式な定義が未だに確立されていないことを示唆しています。たとえば、宋鎮豪は、この書が楚の史官によって作成され、重要な出来事を年代記する意義を持つと考えています。一方で、エドワード・ルイス・ショーネシーは、『繋年』が複数の国の歴史を包括的に比較した形式のものであると述べています。

さらに、胡平生は『繋年』を、周の史官や他の記録から一部の情報を抽出し、楚の史官によって整理・編纂されたものと考えています。このように、様々な視点からの議論があり、『繋年』の全体像や位置づけは依然として再評価が求められています。

近年の発表

2011年12月19日には『清華大学蔵戦国竹簡（貮）』が出版され、『繋年』の全23章が公式に収録されました。この出版を契機に、さらなる研究が進むことが期待されており、古代中国の歴史解明に向けた貴重な手がかりとなっています。これにより、従来の歴史観に新しい視点を提供する可能性も高まっています。この文献が持つ意義は、今後の中国の古代史研究に大きく寄与することでしょう。

もう一度検索