罽賓

罽賓（けいひん）とは：古代カシミールの王国

罽賓（けいひん）は、古代に北インドのカシミール地方、もしくはガンダーラ地方に存在したとされる国です。中国の史書にその名が登場し、漢との交流やクシャーナ朝への服属、唐との交流などを通して、その歴史が語り継がれています。

歴史

前漢時代

紀元前2世紀以前、イシク湖周辺にいた塞族（サカ人）は、月氏の残党に追われ、南へ移動し、カシミール地方またはガンダーラ地方に罽賓国を築きました。

前漢の武帝の時代に漢との交流が始まりましたが、罽賓王・烏頭労は漢の使者を度々殺害。烏頭労の死後、その子が王位を継ぎ漢に貢物を献上しました。しかし、罽賓王が再び漢の使者を殺そうとしたため、使者は容屈王子と協力して罽賓王を討ち、新たな王を立てました。

その後、漢の使者が罽賓国と不和になり拘束、部下も殺害される事件が発生。漢は国交を一時断絶しましたが、後に罽賓国が謝罪し、関係修復が試みられました。

後漢時代

大月氏のクジュラ・カドフィセスがクシャーナ朝を創始すると、罽賓国はクシャーナ朝の支配下に入りました。

隋唐時代

隋の煬帝が西域諸国を招集した際、多くの国が訪れたものの、罽賓国は参加しませんでした。

唐代に入ると、罽賓国は唐へ使節を送り、貢物を献上するなど友好的な関係を築きました。唐は罽賓国に使節を送ったり、官職を授けたりするなど、交流を深めました。758年には、再び朝貢を行っています。

地理

中国の史書には、罽賓は「平らな地」、「四方の山に囲まれた地」、「葱嶺（パミール高原）の南」と記されており、現在のカシミール地方、またはガンダーラ地方に位置していたと考えられています。首都は時代によって異なり、循鮮城、善見城、脩鮮城と呼ばれていました。

習俗

気候は温暖または蒸し暑く、様々な植物が生育し、農業も盛んでした。人々は冬に生野菜を食べる習慣がありました。また、彫刻や建築、織物、刺繍などの技術に優れ、金、銀、銅、錫を使った器を作っていました。

街には市場が立ち並び、独自の貨幣を使用していました。貨幣には騎馬や人面が描かれていたようです。牛、水牛、象などが生息し、人々は象に乗って移動していました。

宗教は仏教が信仰されていました。梁の時代には、罽賓国の僧侶が扶桑（日本）に仏教を伝えたという記録も残っています。

主な罽賓王

烏頭労
烏頭労の子（名不詳）
陰末赴
馨孽（唐代の始祖）
曷擷支
葛羅達支特勤
烏散特勤
拂菻罽娑
* 勃匐準

まとめ

罽賓国は、カシミール地方を舞台に、様々な王朝との関わりを持ちながら歴史を刻んだ国です。その文化や習俗は、現代にも影響を与えているかもしれません。

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