羅公遠

羅公遠（ら こうえん）

羅公遠（生没年不詳）は、唐の玄宗皇帝の時代に仕えたとされる道士です。『新唐書』では羅思遠と記述されていますが、唐代の伝奇小説においては羅公遠として知られています。彼は彭州九隴県の出身とされています。

伝説

幼い頃から道術を好んでいたと伝えられています。ある時、州の刺史が人間に化けた白龍を叱責し、その正体を顕わにしたところ、羅公遠はその能力を見出されました。刺史の推薦により長安へ赴きましたが、張果や葉法善には当初、冷笑されたといいます。しかし、碁石を使った奇術で彼らを驚かせ、最終的には同等の存在として認められました。

羅公遠にまつわる逸話は数多く残されています。張果と葉法善が術で取り寄せた果物を炎で妨害した話や、玄宗皇帝を月まで橋を架けて月宮へ連れて行った話は有名です。玄宗が月宮で見た光景をもとに作曲したのが、あの有名な「霓裳羽衣の曲」であるという伝説もあります。

また、三蔵法師（不空金剛）と術比べをして雨乞いを成功させたり、竹の枝を七宝如意に変えたり、玉清神女を操って三蔵法師の操る菩薩や金剛力士を出し抜き、その袈裟を奪ったという話も伝えられています。

玄宗皇帝から隠形の術を乞われた際には、それを強く諫めました。皇帝がさらに問い詰めると、羅公遠は逃げ出して柱の中に隠れてしまいます。玄宗が柱を破壊すると、今度は礎石の中に隠れ、礎石を取り替えても別の石に隠れるという奇術を繰り返しました。玄宗が謝罪すると、ようやく姿を現したものの、結局不完全な術を教えたために、玄宗は彼を殺してしまったと伝えられています。

しかし、数年後、宦官の輔仙玉が蜀の地で羅公遠と再会しました。羅公遠は「お上は、なんとひどいことをされる」と話し、玄宗への伝言を頼んだといいます。

再び玄宗と会った羅公遠は、『三峯歌』八首を進講し、玄宗がこれを実践したところ、精力が充実したとされています。その後、再び姿を消しました。

至徳元載（756年）、安史の乱が勃発し、玄宗が蜀の地へ避難する際、羅公遠は再び現れ、成都まで見送った後、去っていきました。玄宗の蜀への逃避を予言していたとも言われています。

『広異記』には、天狐と術比べをして捕らえ、新羅へ送ったという説話も残っています。

伝記資料

『新唐書』巻二百四 列伝第百二十九 「方技・張果伝」
杜光庭『仙伝拾遺』
段成式『酉陽雑俎』
戴孚『広異記』

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