羅洪先

明代の儒学者、羅洪先（ら こうせん）

羅洪先（1504年 - 1564年）は、中国明代の儒学者であり、字は達夫、号は念庵と称しました。諡は文恭です。吉安府吉水県の出身で、その学識と社会への貢献は後世にまで語り継がれています。

生涯

幼少の頃から学問に励み、15歳で王守仁（王陽明）の著書『伝習録』に感銘を受け、王陽明に師事することを志しました。しかし、父親の反対により、その願いは叶いませんでした。その後、同郷の李中や楊珠に師事し、学問を深めました。

嘉靖8年（1529年）には進士となり、修撰に任命されます。その後、春坊左賛善へと昇進しましたが、翌年、世宗の怒りを買い、官職を剥奪されてしまいます。官を辞した後、故郷に戻り、陽明学を基礎として、天文学、地理学、礼楽、典章、治水、兵学、さらには陰陽算術など、幅広い分野の学問を深く探求しました。また、官吏と協力し、飢饉対策や侵略への備えに尽力するなど、その功績は非常に大きいものでした。

晩年は、山中の石蓮洞という洞窟に隠棲し、外部からの訪問を一切断ちました。3年間の隠遁生活の後、61歳でその生涯を閉じました。

功績

羅洪先は、王陽明の死後、徐愛、鄒守益、王畿、銭徳洪、王艮といった他の学者たちと共に、師の学風を継承し、広めることに貢献しました。特に、陽明学が心の内面を重視するあまり、現実から遊離する傾向があることを指摘し、その点を戒めました。羅洪先は、儒者の学問の目的は、社会を良くし、民を救うこと（経世済民）にあると考え、私欲を捨てて事に当たるべきであると説きました。彼の思想は、単なる机上の空論ではなく、現実社会での実践を重視するものでした。

著書

羅洪先は、数々の著作を残しています。主なものとして、以下が挙げられます。

『冬遊記』
『念庵集』
『広輿図』

これらの著書を通じて、羅洪先の学問に対する深い造詣や、社会に対する熱い想いを窺い知ることができます。

参考文献

羅洪先に関する研究は、以下の文献で詳しく紹介されています。

『明史』巻283・儒林伝
『明儒学案』巻18
『国朝献徴録』巻19

これらの文献は、羅洪先の生涯や思想を理解するための重要な資料です。

羅洪先は、単なる学者としてだけでなく、社会貢献者としても尊敬されるべき人物であり、その思想と行動は、現代においても多くの示唆を与えてくれます。

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