羊背岩

羊背岩（ようはいがん）

羊背岩とは、氷河の侵食作用、具体的には氷食によって形成された独特の地形を指します。この地形は、基盤岩が氷河の動きに伴い、丸みを帯びた形状になることが特徴です。さらに、波状の起伏や群れをなす形状を示すことから、特に連続した状況では羊群岩と呼ばれる場合もあります。羊背岩の別名には、氷食円頂丘やロッシュムトネなどがあります。

概要

羊背岩は、氷河の動きによって基盤が研磨され、特徴的な形状を形成します。上流側が丸く研磨される一方、下流側は荒く削られることで、氷河の流れる方向を知る手がかりとなります。この現象は、氷河流の進行方向に合致しており、その上には氷河によって生じた擦痕や条線が見られます。これらの地形は都市氷河だけでなく、山岳氷河でも広く観察されます。

また、羊背石の周辺が平坦に広がった場合、羊背石原と呼ばれる地形が形成されることがあります。この羊背石原も氷河の流れに沿った形状を示し、これにより氷河の動きの影響を読み取れるのです。

研磨侵食の仕組み

羊背岩の形成において重要な役割を果たすのが研磨侵食です。これは、氷河氷が基盤の岩を磨き、削り取るプロセスを指します。氷河の中に含まれる粗い岩石の破片や零細な砂は、氷の圧力によって局所的に集中的に研磨され、岩を滑らかにします。このような作用は、障害物による圧力の増加がある場所で特に顕著です。

別名で磨食と呼ばれ、氷河の移動によって地形が成り立つ際の一環として位置づけられています。羊背岩は地形の一部として氷河の活動の証拠を残しており、その形成過程は興味深い研究対象となっています。

語源と歴史

羊背岩という名称は、18世紀末にオラス・ド・ソシュールによって命名されました。彼はアルプスでこの特徴的な地形を発見し、当時人気だった滑らかなカツラに見られる波打った模様に似ていることから、この名前が付けられました。1840年には、ルイ・アガシーがさらに詳細にこの地形について言及しました。

地形の特性

羊背岩の特徴的な研磨面には、上流側にのみ擦痕や溝型が見られます。これに対して、下流側は大きく削られるため、急な断面を呈します。形状は氷河の流れの方向に対して楕円的または長方形に近く、サイズは長さ1メートルから数百メートルに及ぶこともあります。このように、多様な形状と規模を持つ羊背岩は、さまざまな地形環境に出現することがあります。

「ホエールバック」と呼ばれる形状は、上流側の斜面が劣化し、下流側がさらに長く延びている特徴を持つものです。また、岩石ドラムリンといった類似の特徴を持つ地形も存在します。

日本における例

日本でも羊背岩は多く見られ、特に北アルプスの黒部五郎岳や白馬岳、日高山脈の幌尻岳などがその代表例です。これらの場所では、氷河の侵食作用によって形成された羊背岩と瘤状岩が見られます。

シェーレン

内陸氷河によって研磨されて形成された「シェーレン」と呼ばれる小島も、羊背岩の一種です。特に氷食を受けた地域の海岸に見られ、小さな島々が群を成しています。ノルウェーやスウェーデン、フィンランドの沿岸地域には、このようなシェーレンの例が多く存在します。

羊背岩は氷河の動きによって形成される地形の中でも特に重要で、美しい景観を持った多様な生態系に寄与しています。

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