美しき水車小屋の娘

シューベルト歌曲集『美しき水車小屋の娘』

フランツ・シューベルト作曲の歌曲集『美しき水車小屋の娘』（作品25、D 795）は、ヴィルヘルム・ミュラーの詩による全20曲からなる作品です。一般的に「冬の旅」「白鳥の歌」と並び、シューベルトの三大歌曲集の一つとして知られています。

作品の背景

この歌曲集は、一人の若い粉ひき職人が水車小屋で働く美しい娘に恋をするものの、娘は別の男性（狩人）を選び、失恋した粉ひき職人が川に身を投げてしまうという悲恋物語を、20曲の歌を通して語り上げます。

当時、粉屋の娘を題材とした物語は、パイジエッロのオペラ『水車小屋の娘』の成功をきっかけに流行していました。ゲーテもこのテーマで詩を書いています。ミュラーの詩も、これらの先行作品から影響を受けています。

シューベルトは1823年の5月から11月にかけて作曲に取り組みました。友人の家でミュラーの詩集を目にしたことがきっかけだったと言われています。シューベルトはこの物語に深く共感し、若者の心情を音楽で見事に表現しました。

作品の特徴

シューベルトは、ミュラーの原詩集からプロローグとエピローグ、そしていくつかの詩を削除し、残った20曲に作曲しました。題名も変更し、歌詞にも一部手を加えていますが、大きな変更はありません。

「冬の旅」が嘆きと諦めに満ちた男の心情を描いた作品であるのに対し、「美しき水車小屋の娘」は、希望に胸を膨らませて旅に出た若者が恋によって変化していく姿を描いた、いわば「青春の歌」と言えるでしょう。

演奏について

この作品は元々テノールのために書かれており、シューベルト自身もアマチュアテノール歌手に献呈しています。そのため、リリックテノールによって原調で演奏されるのが、作品の内容から見ても最もふさわしいと言えるでしょう。しかし、バリトンやバスによって低く移調して歌われることも少なくありません。

曲目一覧

1. さすらい (Das Wandern)
2. どこへ？ (Wohin?)
3. 止まれ！ (Halt!)
4. 小川への言葉 (Danksagung an den Bach)
5. 仕事を終えた宵の集いで (Am Feierabend)
6. 知りたがる男 (Der Neugierige)
7. 苛立ち (Ungeduld)
8. 朝の挨拶 (Morgengruß)
9. 水車職人の花 (Des Müllers Blumen)
10. 涙の雨 (Tränenregen)
11. 僕のもの (Mein!)
12. 休み (Pause)
13. 緑色のリュートのリボンを手に (Mit dem grünen Lautenbande)
14. 狩人 (Der Jäger)
15. 嫉妬と誇り (Eifersucht und Stolz)
16. 好きな色 (Die liebe Farbe)
17. 邪悪な色 (Die böse Farbe)
18. 凋んだ花 (Trockne Blumen)
19. 水車職人と小川 (Der Müller und der Bach)
20. 小川の子守歌 (Des Baches Wiegenlied)

演奏時間：約60分

シューベルトは翌1824年に第18曲を元に、フルートとピアノのための『「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲』D802を作曲しています。

外部リンク

美しい水車小屋の娘 D.795の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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