美濃電気軌道セミボ510形電車

美濃電気軌道セミボ510形電車

美濃電気軌道セミボ510形電車は、1926年に美濃電気軌道によって新製され、半鋼製の四軸ボギー車として知られています。この電車は、1941年に形式称号が「セミボ」から「モ」に改訂され、モ510形に改名されました。このモデルは、名古屋鉄道に引き継がれ、21世紀初頭まで営業運転に使用されました。特に、「丸窓」と呼ばれる楕円形の戸袋窓がユニークな特徴で、鉄道ファンからは「丸窓電車」として親しまれていました。

概要

美濃電気軌道の初めてとなる半鋼製車両で、自らのデザインと機能性で多くの乗客を魅了しました。1926年に日本車輌製造で新たに製造された5両（セミボ511 - 515）は、「セミボ」が「セミスチール・ボギー」の略称であることを示しています。両車は、道路と鉄道の併用区間を走るために設計されており、アメリカの「インターアーバン」とも共通点が見られました。

車両の特徴

セミボ510形は、正面が半円筒型の5枚窓で構成された流線型車体を有し、大正時代の日本における鉄道デザインの潮流を反映しています。このデザインは、美濃電気軌道が1923年に製造された木造ボギー車BD505形に影響を受けており、全体的に安定感ある外観を持ちます。側窓は二段窓で構成され、客用扉は両端に2つ存在します。

主要機器

主要機器は、イングリッシュ・エレクトリック（E.E.）社製のもので、直接制御方式が採用されています。主電動機はDK60型で、各車両に2基搭載され、出力は44.8kWです。台車は、BD505形がJ.G.ブリル社製、セミボ510形は日本車輌製造製のものが使用されています。

運用の変遷

当初は鐵道線の笠松線で運用されていましたが、美濃電が1930年に名岐鉄道に合併された後、軌道線の美濃町線に転属しました。名鉄の形成後も、長期間にわたり美濃町線の主力車両として活躍しました。集電装置は、当初はトロリーポールを使用していましたが、後にビューゲルに交換されました。

1967年には岐阜市内線と揖斐線の直通運転が開始され、セミボ510形は共に古い車両ながらもこの運用に選ばれました。改修によりスカーレットと白のツートンカラーに塗装され、車内はクロスシートに変更されました。これにより、長年の経年を乗り越え、強力な電車へと進化しました。

晩年と廃車

1980年代後半に入ると、冷房設備のないモデルとして時代の流れにそぐわなくなりました。そのため、新製されたモ770形に代替される形で、1988年までに廃車となりました。しかし、モ512 - 514の3両はその後も運用され続けました。2005年には岐阜600V線区が全廃されたため、モ510形は形式消滅を迎えました。

保存と現在の使用

セミボ510形と520形は、その独自の形状から多くの車両が保存され、または他の用途に転用されています。モ512は静態保存され、モ513やそのほかの車両も保存状態にあります。入目の電車としての歴史は、地域の文化とともに語り継がれています。最近では、モ510形をモチーフにしたバスも存在するなど、その影響は現在でも見られます。

このように美濃電気軌道セミボ510形電車は、単なる交通機関にとどまらず、歴史的な価値を持つ文化的遺産として今も残っています。

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