義禁府

義禁府（ウィグムブ）について

義禁府は、李氏朝鮮の時代に設立された特別な機関で、主に王の命令に基づき、特別事件に関する捜査や尋問、監獄の管理を行っていました。この機関は、司法、警察、監察、そして監獄の機能を一手に引き受ける重要な役割を果たしました。

設立の歴史と背景

義禁府は、高麗時代の忠烈王の時代に設立されました。当初は、李成桂が権知高麗国事に即位した際に、巡軍万戸府を設置し、そこで巡綽、捕盗、禁乱などの警察業務を担うこととなりました。この頃、司法権は刑曹が握っていましたが、1394年（太祖3年）には、特に重要な事件において朴威の不敬罪を刑曹と司憲府の合同で処決したことで、義禁府も司法機関としての役割を果たすことがありました。

その後、義禁府の機能は拡大し、滞囚になっている者の処決を行うなど、刑獄の責任も担うようになりました。このように、義禁府は警察業務に加え、刑事事件の処理も行う機関として成長したのです。

取り扱う罪科

義禁府が取り扱った罪には、王族の犯罪、国事犯、反逆罪といった重大な犯罪のほか、子孫の父祖に対する罪や奴婢の主人に対する罪などの綱常罪、また司憲府で摘発された事件、他の機関で長引いた判決の案件なども含まれました。特に、義禁府は死刑に関する特別な裁判機関の権限も持っており、「禁府三覆之法」や「三覆啓」といった裁判制度を承継していました。

経国大典と義禁府

しかし、『経国大典』の中では、義禁府の役割が限定されていることが明示されています。警察業務は五衛に分かれて与えられ、義禁府は奉教推鞫する機関として王の命によってのみ罪人を推鞫できると定められています。また、刑曹、漢城府と共に三法司として位置付けられています。

李朝初期の影響

李朝初期において義禁府は、その機能を拡大しながらも、他の機関との協力関係を築いていきました。経国大典や続六典、六典条例などの法令にも、その役割は反映されています。そのため、義禁府は李氏朝鮮における司法制度の中で重要な役割を果たし、特に政治的な事件や難解な事件を扱うことで、朝鮮全体の秩序維持に寄与したといえます。

義禁府は、李氏朝鮮時代の司法制度における特異な存在であり、国の治安や政治の安定に必要不可欠な機関でした。その運営と活動は、当時の朝鮮社会の法と秩序に大きな影響を及ぼしました。

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