羯鼓

羯鼓（かっこ）

羯鼓（鞨鼓とも）は、日本の伝統音楽である雅楽で使用される打楽器の一種で、鼓の仲間です。特に唐楽において重要な役割を果たし、演奏の開始を告げる指揮者のような役割を担っています。奏者は羯鼓を自身の正面に横向きに置き、先端が団栗状になった桴（ばち）を使って、左右両面を打ち鳴らします。

構造

羯鼓は、中央がやや膨らんだ円筒形の胴体（鼓胴）と、音を出すための鼓面から構成されています。

鼓胴: 色鮮やかな彩色が施され、多くの場合、美しい花の模様が描かれています。
鼓面: 鉄製の輪に馬の皮が張られており、左右の鼓面は「調緒（しらべお）」と呼ばれる革紐で締め付けられています。この調緒を締めたり緩めたりすることで、音程を細かく調整することが可能です。

演奏法

羯鼓の演奏には、専用の桴（ばち）が用いられます。基本的な演奏法は、以下の3種類に大別されます。

正（せい）： 右側の鼓面のみを単独で打ちます。
来（らい）： 連続して打ちます。
片来（かたらい）： 左側の桴のみで打ちます。
諸来（もろらい）： 両方の桴を使い、左右の鼓面を交互に打ちます。

羯鼓の演奏は非常に難しく、長年の鍛錬を積んだ雅楽家であっても、滑らかな演奏は容易ではありません。雅楽師の東儀俊美氏は、奏者が音楽のリズムを自然に体得している必要性を指摘し、そうでなければ羯鼓を上手く演奏することは難しいと述べています。

その他の情報

宮内庁楽部の演奏会においては、羯鼓の奏者のみが、演奏の開始前と終了後に礼を行います。
高麗楽（こまがく）では羯鼓は使用されず、代わりに三ノ鼓（さんのつづみ）が用いられます。



参考文献

東儀俊美「雅楽縹緲」
雅楽入門事典（柏書房）

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