羲和

羲和（ぎわ）

羲和（ぎわ、拼音: Xīhé）は、中国神話において太陽を司る重要な神格であり、また伝説上の官吏ともされています。神としての羲和は、太陽の乗り手、あるいはその母と見なされ、官吏としては彼の名が一族に分けられた4人として現れることもあります。彼らは様々な方位を司り、天文の観測を行ったとされています。

起源の考察

羲和のモチーフは、紀元前5000年ころの河姆渡文化にさかのぼると考えられています。この時代には、土器に描かれた二羽の鳥が太陽に関連する円を背負う姿が確認されており、考古学者の林巳奈夫は、これが太陽を運ぶ車を操る羲和に関連していると指摘しています。これは、羲和が太陽の運行を担う神格であったことを示唆しています。

羲和の神話の類型

羲和に関する神話には、主に二つの側面があります。一つは「日御（にちぎょ）」としての羲和、もう一つは「十日の母」としての羲和です。また、羲和は文献において四人に分けられて官吏として言及されることもあります。

日御としての羲和

羲和が太陽を運ぶ神として知られるようになったのは、屈原の『離騒』に詠まれたことによります。この作品には、羲和が太陽を御する姿が具体的に描かれています。さらに『淮南子』の天文訓では、羲和が六頭の龍に牽引される太陽車を御している描写があります。

十日の母としての羲和

羲和が太陽の母として描かれる著名な古典は『山海経』です。この経典には、羲和が太陽を水浴びさせる「甘淵」の存在が確認できます。この「甘淵」とは、扶桑の大木の近くに位置しており、そこでは10個の太陽が湯浴みをするとされています。これらの太陽は、1日に1つずつ扶桑の枝から昇るとされ、古代の十日説話に基づいて、古代中国のカレンダーの一部を形成しています。羲和が太陽神であったことは、この解釈によって強調されます。

官吏としての羲和

儒教の経典『尚書』によると、羲和は堯の命令に従って太陽や星の運行を観測し、人々に農業に関する暦を授けたと伝えられています。また、羲和は羲氏と和氏の総称ともされており、彼らは四方を統治する役割が与えられたと言われています。しかし、時代が進むにつれ、羲和の特徴が官吏に分割される形で記述されるようになったと考えられています。

現代における影響

羲和に関する十日説話は、古代中国のカレンダー単位を形成する要素となり、その影響は今日まで残っています。例えば、現代のカレンダーでは、1ヶ月を3つの期間に分け、1日から10日を上旬とする慣習が根付いています。また、中国が2021年に打ち上げた初の太陽観測衛星は、「羲和号」と名付けられ、古代の太陽神にちなんでいます。これらの現代的な試みは、古代の神話や文化が今もなお影響を及ぼしていることを示しています。

参考文献

• - 森村, 宗冬『太陽と月の伝説』新紀元社

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