羽地ダム

羽地ダムについて

羽地ダム（はねじダム）は、沖縄県名護市に位置するダムで、二級河川である羽地大川の本流に築かれています。このダムは内閣府沖縄総合事務局によって管理される多目的ダムであり、特定多目的ダム法に基づき国土交通省が直轄するプロジェクトの一部として設計されました。ダムの主要な役割は、羽地大川の治水、名護市及びその周辺地域にわたる約1,217ヘクタールの灌漑、さらには沖縄本島全体に向けた1日1,217立方メートルの上水道用水の供給です。

歴史

羽地ダムの建設は、第二次世界大戦後の沖縄本島における経済成長に伴って水の需要が高まったことから始まりました。特に沖縄本島南部の人口が集中する地域では水不足が問題視され、北部山間部の水源確保が検討されるようになりました。1966年5月にはアメリカ陸軍工兵隊が最初の計画を提案し、1970年には琉球政府建設局が詳細な調査を開始しました。その後、1972年に本土復帰を迎えた際、調査は沖縄開発庁に引き継がれました。

1981年に建設事業が正式に始まり、ダム本体の工事は1996年に着手、2001年には試験湛水が行われ、その4年後の2005年に竣工を迎えました。当初試算されていた260億円の事業費は、不測の事態や追加対策により最終的に700億円に達しました。

構造

羽地ダムは、その建設地の地質的条件により重力式コンクリートダムが不適と判断されたため、曲線的なデザインが採用されました。左岸の地質を考慮し、洪水吐きは右岸に設置され、堤体の傾斜も工夫されています。堤体の上流側の傾斜は1:2.7、下流側は1:2.2となっています。

洪水吐きは自由越流式で、減勢工には水平跳水式が選ばれており、さらにバッフル型の二次減勢工も設けられました。取水方式では、空気を用いた多孔型ゲートレス式が導入され、効率的な水の取り扱いが実現されています。また、放流設備には日本初の引張りラジアルゲートが採用されました。管理棟と取水塔は、歴史的人物である蔡温の五行思想に基づき、五角形のデザインが施されています。このような工夫の中、堤高が高いため、魚道には体積圧縮により魚を移動させるエアリフト方式が新たに導入されています。

蔡温あけみお湖

羽地ダムによって形成された人造湖は「蔡温あけみお湖」と名付けられました。この名は、琉球王朝時代の三司官で羽地大川の改修を手掛けた蔡温に由来しています。「明け」は夜明けを、「澪」は水路の意を含んでいます。ダム建設に伴い、周辺道路も付け替えられ、またきな大橋が架けられました。

工事中には赤土流出を防ぐための沈砂池が設置され、さらにオキナワコキクガシラコウモリの保護のため新たに人工洞窟が整備されました。こうした施設は自然環境への配慮と、地域社会のニーズに応える重要な役割を果たしています。

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