羽田空港 (大田区)

羽田空港：歴史と変貌を遂げた東京の玄関口

東京都大田区に位置する羽田空港は、単なる空港名ではなく、羽田空港一丁目から三丁目までを包括する町名でもあります。郵便番号は144-0041。現在では東京国際空港（通称：羽田空港）とその関連施設が大部分を占めていますが、かつては、穴守稲荷神社や羽田海水浴場、羽田競馬場などを擁し、首都近郊屈指の観光地として賑わっていました。

地理的位置

羽田空港は、大田区の沿岸部に位置し、多摩川を挟んで神奈川県川崎市と、海老取川を挟んで大田区内の他の地域と隣接しています。さらに、京浜運河や東京湾を挟んで、昭和島、京浜島、城南島、令和島などの島々と接しています。

歴史：干潟から国際空港へ

現在の羽田空港一丁目、二丁目付近は、かつて「羽田浦」と呼ばれ、元禄・天明の頃には葦が生い茂る干潟でした。この地を開墾したのは、羽田猟師町の名主であった鈴木弥五右衛門です。彼は羽田浦東方の干潟に着目し、数町歩に及ぶ干拓事業に着手しました。羽田村の名主石井四郎右衛門から干潟を譲り受け、堤防を築き、開墾を行いました。弥五右衛門は、猟師町の名主職を継承者に譲り、自らこの地に移り住んで開墾に尽力しました。

開墾は成功しましたが、東京湾と多摩川に面した立地から、高潮や洪水の危険に常にさらされていました。そこで、弥五衛門は作物を植える場所を高く盛り上げ、堤防を強化するために数千本の松を植林しました。この松林は防潮林としての役割を果たすと同時に、沖から眺める美しい景観を作り出しました。この地形から「扇ヶ浦」や、元々あった小さな島から「要島」と呼ばれるようになったと言われています。

1829年（文政12年）、この開墾地は「鈴木新田」と名付けられ、羽田村、羽田猟師町、鈴木新田の三集落を合わせて「羽田三ヶ村」と呼ばれるようになりました。町村制施行（1889年）を経て、羽田町となり、1932年（昭和7年）には東京市蒲田区に編入されました。この際に鈴木新田は、「羽田穴守町」、「羽田鈴木町」、「羽田江戸見町」、「羽田御台場」、「鈴木御台場」に分割・改称されました。

それぞれの地域には特徴がありました。羽田穴守町は穴守稲荷神社を中心とした門前町で、鉱泉宿や料亭などが立ち並びました。羽田鈴木町は多くの住宅が密集し、玉川弁財天や鈴納稲荷神社がありました。羽田江戸見町には、羽田運動場や鴨場、そしてのちに東京国際空港の前身となる東京飛行場が建設されました。羽田御台場と鈴木御台場は羽田競馬場がありました。

第二次世界大戦後、羽田は連合国軍によって接収され、空港建設のために多くの住民が強制退去させられました。そして、戦後の復興、空港拡張を経て、羽田空港は今日の国際空港としての姿を確立していったのです。

現代の羽田空港

現代の羽田空港は、国際線、国内線ターミナル、そして周辺には「HANEDA INNOVATION CITY」などの複合施設が整備され、交通の要衝として、また、新たなビジネスや観光の中心地として発展を続けています。その一方で、かつての観光地としての面影を偲ばせる穴守稲荷神社の旧一の大鳥居や、航空神社などの史跡も残されています。

羽田空港の歴史は、人々の努力と時代の流れによって形作られてきた、日本の近代化を象徴する物語と言えるでしょう。

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