羽田町

羽田町：穴守稲荷神社と飛行場の町

東京都大田区の南東部、現在の京急空港線沿線に位置する羽田町は、明治時代から昭和時代初期にかけて存在した町です。穴守稲荷神社を中心とした近郊屈指の観光地として栄え、その歴史は、近隣の村々の合併から始まり、飛行場や競馬場などの誘致、そして東京市への編入という激動の時代を反映しています。

町の成立と発展

羽田町は、1889年（明治22年）の町村制施行により、麹谷村、萩中村、羽田猟師町、羽田村、鈴木新田が合併して誕生しました。特に鈴木新田は、ナトリウム冷鉱泉が湧き出したことで、首都近郊の保養地として発展を遂げます。1902年（明治35年）には京浜電気鉄道の羽田支線が開通し、交通アクセスが向上。1907年（明治40年）には羽田村が町制を施行し、羽田町となりました。

この町制施行は、当時荏原郡内で品川と大森に次ぐ速さで、穴守稲荷神社の信仰による経済的繁栄が大きく貢献したとされています。明治時代末期には人口は約1万5000人に達し、その税収の2割以上を人口わずか700人の穴守地域が担っていたという記録も残されています。

羽田町は、交通の便の良さ、そして穴守稲荷神社を中心とした観光地としての発展により、多くの施設を誘致しました。1909年（明治42年）には京浜電鉄が羽田運動場を開設し、陸上トラック、野球場、テニスコートなどを整備。さらに、海水浴場や、1917年（大正6年）には日本飛行学校と日本飛行機製作所も設立されました。1927年（昭和2年）には羽田競馬場が開設され、町は活気に満ち溢れていました。

東京市編入とその後

1931年（昭和6年）には、それまで立川にあった東京飛行場が鈴木新田北側に移転・開港。そして、1932年（昭和7年）には荏原郡全域が東京市に編入され、羽田町は蒲田区の一部となりました。この編入に伴い、羽田町は羽田一丁目から三丁目、羽田本町など、複数の町名に分割されました。当初は、大森町、入新井町とともに大森区となる予定でしたが、最終的には蒲田区に編入されることになります。

1943年（昭和18年）の東京都制施行により、東京市は廃止され、羽田町は東京都蒲田区の一部となりました。その後、1947年（昭和22年）に蒲田区は大森区と合併して大田区となり、羽田町は消滅しました。現在では、羽田町の区域は北糀谷、西糀谷、萩中、羽田、羽田旭町、東糀谷、本羽田、大森南一丁目、羽田空港一・二丁目などに相当します。

羽田町の主な施設

羽田町には、穴守稲荷神社をはじめ、玉川弁財天、羽田神社、天祖神社、糀谷神社など多くの神社が存在しました。他にも、東京飛行場、羽田小学校、日本飛行学校、羽田運動場、羽田穴守海水浴場、羽田競馬場、羽田穴守三業地など、多様な施設が町を彩っていました。これらの施設は、羽田町の賑わい、そして発展に大きく貢献しました。

交通

羽田町における交通の要衝は、京浜電気鉄道（現在の京浜急行電鉄）の穴守線でした。糀谷駅、大鳥居駅、稲荷橋駅（現在の穴守稲荷駅）、そして穴守駅など、複数の駅が町内に存在し、人々の往来を支えました。

まとめ

羽田町は、穴守稲荷神社を中心とした観光地として、そして東京飛行場の開設などによって発展を遂げた町でした。その歴史は、近隣の村々の合併から始まり、交通網の発展、そして様々な施設の誘致と、激動の時代を反映しています。現在、羽田町の面影は直接的には見ることができませんが、大田区の現在の街並みの中に、その歴史と文化の一部が受け継がれていると言えるでしょう。 また、羽田空港という現代日本の象徴的な場所の基礎が、この羽田町に存在したことを忘れてはならないでしょう。

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