羽越しな布

羽越しな布：時を紡ぐ、自然素材の織物

羽越しな布は、山形県鶴岡市と新潟県村上市の境界付近に位置する集落で、古くから織り継がれてきた伝統的な織物です。2005年には経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受けました。その名は、庄内地方（山形県）の古い国名である「羽前」と、新潟県の古い国名である「越後」から一文字ずつ取って名付けられました。

概要

羽越しな布は、鶴岡市温海地域の鼠ヶ関と、村上市山北地域の関川、雷、山熊田の3つの集落で主に生産されています。これらの地域に自生するシナノキやオオバボダイジュといったシナノキ属の落葉樹の樹皮から採取される繊維を、丹念に糸へと加工し、織り上げて布状に仕上げます。

一枚の布を完成させるまでには、実に21もの工程を経なければならず、その期間は約1年にも及びます。その起源は平安時代にまで遡るとされ、長い歴史の中で培われてきた職人たちの技術と知恵が息づいています。

かつては、その丈夫さと水に対する強さから、衣類や穀物袋、漁網など、生活に欠かせない様々な用途に広く用いられていました。しかし、時代の変遷とともに、その役割も変化し、現在では暖簾、帽子、鞄、ペンケースといった、趣味性の高い工芸品として新たな価値を創造しています。

製法

シナノキなどの樹皮を剥ぎ、 внутренней 皮膚を取り出す
皮を煮て柔らかくする
繊維を細かく裂き、紡いで糸にする
糸を染め、織り機で織り上げる

これらの工程はすべて手作業で行われ、職人の熟練した技術と根気が必要です。

施設

関川集落には、羽越しな布の体験、展示、販売などを行う拠点施設として「関川しな織センター」があります。ここでは、羽越しな布の歴史や製法を学ぶことができるほか、実際に織りの体験をすることも可能です。

また、山熊田集落には、2000年に地元の有志によって設立された体験施設「さんぽく生業の里」があります。ここでは、羽越しな布をはじめとする地域の伝統的な生業を体験することができます。

脚注

参考文献
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日。ISBN 978-4-416-61438-9。

関連項目

村上木彫堆朱

外部リンク

伝統的工芸品「羽越しな布」 - 鶴岡市
羽越しな布 - 村上市観光協会
羽越しな布 - 新潟県産業労働部 地域産業振興課
東北の伝統的工芸品ホームページ：羽越しな布 - 経済産業省東北経済産業局
羽越しな布振興協議会 - ウェイバックマシン
レファレンス共同データベース：岩船郡山北町のシナ織物に関する文献を教えてください。 - 国立国会図書館

羽越しな布は、自然の恵みと人々の知恵、そして長い年月が織りなす、まさに生きた文化遺産です。その美しさと奥深さに触れてみてください。

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