考工記

考工記（こうこうき）

『考工記』は、古代中国の文献であり、『周礼』の一部として知られています。この書は、工芸品や建築物の構造、寸法規格、そして製作技法について詳細に論じたものです。

成立について

『考工記』は、周公旦の作と伝えられる『周礼』の一篇ですが、その成立については様々な説があります。通説では、『周礼』自体が前漢代に発見されたもので、当時すでに一部が欠けており、『考工記』はそれを補うために後から付け加えられたと考えられています。

後漢の鄭玄は、司空の篇が失われた後、前世の知識者が記録を基に大まかな内容を補ったと述べています。司空篇を補った人物については、河間献王劉徳や劉歆といった説がありますが、いずれも確定的ではありません。

『周礼』自体の成立も周代とする説は疑問視されており、早くとも戦国時代以降に成立したと考えられています。『考工記』についても、文中に「鄭」や「秦」といった国名が見られることから、西周代の成立はあり得ません。

成立年代については、宇野精一によれば、漢代説と先秦説に大別されます。江永は、地名や方言的な語彙から、東周以後の斉の人物による作であると主張しています。津田左右吉は、『考工記』が漢の少府の属官である考工室に保存されていた記録であり、技術的な内容は後世の学者が机上で考えることが難しかったため、参考にされたのではないかと述べています。

内容

『考工記』は、「国に六職あり」という言葉で始まり、攻木（木工）、攻金（青銅鋳造）、攻皮（皮革製造）、設色（絵画・染色）、刮摩（玉・石）、搏人（陶器製造）の6分野を主に扱っています。全体で7,000文字足らずと短いながらも、構成は整理されておらず、各分野の分量もばらばらです。

例えば、工人に関する記述では、段氏、韋氏、裘氏、筐人、櫛人、雕人といった名目が挙げられているものの、内容が記述されていません。原田淑人は、このような『考工記』の性質から、元々は簡牘書であり、摩滅や錯乱が激しかったものを誰かが再度まとめたのではないかと推測しています。

受容

伝統的には、『周礼注疏』の一部として、鄭玄や賈公彦の注疏とともに読まれてきました。清朝考証学の時代には、江永の『周礼疑義挙要』や戴震の『考工記図』などで研究が進められました。特に戴震の『考工記図』は、寸法研究に数学の知識を積極的に活用しています。

現代語訳としては、林尹による『周礼今注今訳』や、本田二郎による『周礼通釈』があります。また、『考工記』のみの翻訳として、関増建らによる現代中国語・英語・ドイツ語訳である『考工记——翻译与评注』が出版されています。この書籍は、2019年に『Kao Gong Ji – The World’s Oldest Encyclopaedia of Technologies』として改訂されました。

日本の藤原京の都市計画は、『考工記』の影響を受けていたと推定されています。

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