注疏

注疏：中国経典解釈の深化

中国の儒教において、経書は聖人の教えとして最も重要な古典とされています。しかし、経書の理解には注釈が必要不可欠であり、その注釈書が「注疏」です。本稿では、注疏の歴史、種類、そしてその重要性について解説します。

注疏とは？

「注疏」とは、経書に対する注釈書である「注」と、経書とその注をさらに詳細に解釈した「疏」を合わせた名称です。特に儒教経典、特に経書に関する注釈書を指す場合が多いです。経書の本文を理解する上で、注疏は不可欠な存在と言えるでしょう。経書の解釈は時代や学派によって異なり、多様な注疏の存在が、儒学思想の多様性と発展を物語っています。

注：経書の最初の解釈

「注」は、経書の本文に直接付けられた注釈です。漢代から魏晋時代、そして南宋時代に多く作られました。漢代から魏晋時代の注釈は「旧注」、南宋以降、朱子学の影響を受けて作られた注釈は「新注」と呼ばれます。当初は経文とは別に独立した書物として存在していましたが、後[[漢]]の馬融の『周[[礼]]』注以降、経文中に注釈を挿入する形式が一般的になりました。 旧注と新注は、解釈方法や着眼点に違いがあり、儒学史における思想的変化を反映しています。それぞれの注疏を読み比べることで、経書の解釈における多様な視点に触れることができます。

疏：注をさらに解き明かす

「疏」は、経書本文と「注」を合わせて、さらに深い解釈を加えたものです。義疏、講疏、述義、正義など、様々な呼び名があります。南北朝時代に盛行し、唐代の『五経正義』などが代表例です。北宋には『十三経注疏』として体系化されました。この時代の疏を特に「義疏」と呼び、経書だけでなく、仏教や道教の経典に関する疏も含まれます。注疏という場合、一般的には儒教経典、特に経書に関するものを指します。疏の形式には、疏文だけが独立して記される「単疏本」と、経文の間に注文・疏文がはさまっている「経注疏合刻本」の二種類があります。

南北朝期の注疏

南北朝時代は、仏教や道教の影響も受けながら、経書の解釈が多様化した時代でした。この時代の注疏は、後の唐代や宋代の注疏に大きな影響を与えました。様々な学派が独自の解釈を示し、活発な学問交流が行われていたことが、数多くの注疏の誕生につながったと言えるでしょう。当時の社会情勢や思想的背景を理解することで、注疏を読み解く上で重要な手がかりが得られます。

清代の注疏

清代に入ると、考証学が盛んになり、経書研究も新たな段階に入りました。新たな学説に基づき、既存の注疏を批判的に検討し、新たな疏が数多く著されました。中華書局の「清人十三経注疏」シリーズには、この時代の代表的な注疏が収録されています。清代の注疏は、前代の注疏を踏襲しつつ、新たな視点を取り入れ、経書研究をさらに深化させました。この時代の注疏は、現代の経書研究においても重要な資料となっています。

注疏の重要性

注疏は、単なる注釈書ではなく、当時の学者の思想や解釈、そして時代背景を反映した貴重な文献です。注疏を通して、経書の本文だけでなく、歴史、哲学、思想など、多様な側面から中国文化を理解することができます。注疏研究は、中国思想史研究において欠かせないものです。

まとめ

本稿では、中国の経典解釈において重要な役割を果たしてきた「注疏」について解説しました。注疏は、経書理解の深化に貢献するだけでなく、中国思想史、文化史研究においても貴重な資料となっています。様々な時代の注疏を比較検討することで、経書解釈の多様性と、その歴史的変遷を理解することができるでしょう。

もう一度検索