耐火粘土

耐火粘土：高温に耐える粘土の特性と用途

概要

耐火粘土は、非常に高い温度に耐える性質を持つ粘土の一種です。その耐熱性から、耐火煉瓦を始めとする様々な耐火物の主要な原料として利用されています。カオリナイトを豊富に含み、融点を下げる不純物を極力含まないことが、その高い耐熱性を支える大きな要因です。日本の鉱業法では、1690℃以上の高温に耐える粘土を耐火粘土と定義しています。

耐火粘土の特性

耐火粘土は、他の耐火煉瓦素材と比較して、比較的安価で加工しやすいという利点があります。可塑性が高いため成形が容易であり、比較的低温で焼結する性質も持ち合わせています。これらの特性から、様々な形状の耐火物を効率的に製造することが可能です。

主成分はカオリナイトですが、石英、セリサイト、パイロフィライト、長石などの鉱物が副成分として含まれる場合もあります。これらの副成分の種類や含有量、粒度によって、耐火粘土の溶融温度や焼結性が変化します。

耐火性の評価

耐火粘土の耐熱性は、ゼーゲルコーンを用いた試験によって評価されます。ゼーゲルコーンとは、アルミナなどの異なる配合比を持つ三角錐状の試験片で、高温炉内で変形する様子から炉内温度を推定する際に用いられます。耐火粘土は、SK26（1590℃）以上の高温に耐えるものと定義されていますが、日本の鉱業法ではさらに高いSK31（1690℃）以上の耐熱性を求めています。

産地と分類、精製

良質な耐火粘土は、石炭層の下部にある下盤粘土（シートアース）から産出されることが多いです。デンマークのロイヤルコペンハーゲン社も、ボーンホルム島などから産出される耐火粘土を使用しています。

日本では、生成年代の古い硬質粘土（フリントクレー）と、新しい軟質粘土が存在します。生成過程の違いから、耐火粘土は大きく分けて以下の2種類に分類されます。

一次粘土: 残留鉱床に伴って生成される粘土
二次粘土: 堆積鉱床に伴って生成される粘土

さらに、熱水性粘土（カオリン質粘土）、堆積性粘土、頁岩粘土、木節粘土、蛙目粘土など、様々な種類が存在します。木節粘土のようにそのまま出荷されるものもありますが、多くの耐火粘土は精製工程を経ます。伝統的な水簸法に加え、電磁式除鉄機、液体サイクロン、シックナー（沈降濃縮槽）、沈降促進剤、脱水・濾過・乾燥機、浮遊選鉱などの高度な技術が用いられています。

用途

耐火粘土は、耐火煉瓦を始め、陶磁器、るつぼ、匣鉢、ガラスや金属の製造など、幅広い用途で使用されています。硬質粘土は、そのまま焼結させた後、砂状に砕いてシャモット（焼粉）と呼ばれる耐火煉瓦の骨材として利用されます。軟質粘土は、焼結時に収縮を起こしやすく割れたり変形したりするため、シャモットを混ぜることで収縮を防ぎ、目的の形状を維持することが可能です。シャモットは、耐火粘土だけでなく、他の粘土製品の収縮抑制にも役立ち、陶芸などでも広く用いられています。

歴史

日本では、古くから陶磁器などが製造されてきましたが、明治時代までは耐火煉瓦はほとんど生産されていませんでした。地震の多さも影響し、煉瓦造りの建物が普及しなかったこと、高温を必要とする高炉用の耐火煉瓦の需要が少なかったことが原因です。そのため、耐火煉瓦は外国からの輸入に頼っていました。

しかし、明治8年（1875年）、東京府瓦斯局のフランス人技術者ペレグランが群馬県で耐火粘土を発見したことで、状況が一変しました。渋沢栄一の支援を受け、西村勝三が耐火煉瓦製造所を創業し、日本の耐火煉瓦生産が始まりました。

関連企業

品川リフラクトリーズ（前身：伊勢勝白煉瓦製造所）
ロイヤルコペンハーゲン

関連項目

日本工業規格 - JIS R 2304:1995 粘土質耐火れんが
耐火物 - JIS R 2001
* 耐火煉瓦 - 珪石レンガ、高アルミナ質レンガ、白煉瓦

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