聖アグネス

聖アグネス

聖アグネス（Sancta Agnes, 291年 - 304年）は、カトリック教会、聖公会、ルーテル教会、正教会などで崇敬される殉教者です。わずか13歳（または12歳）で殉教したと伝えられ、その純潔と信仰の強さから、多くの人々に尊敬されています。聖女アグネス、聖女アニエス、聖イネスとも呼ばれ、日本正教会では聖致命女アグニヤとして知られています。また、イタリア語名に由来するサンタニェーゼ（Sant'Agnese）という教会名も、彼女にちなんでいます。

概要

聖アグネスは、カトリック教会のミサで記念される女性の中で、聖母マリアを除いた7人のうちの1人です。西方教会では、純潔、少女、夫婦、性暴力被害者、庭師の守護[[聖人]]として広く知られています。記念日は1月21日ですが、カトリック教会では第二バチカン公会議後の教会暦改正前は1月28日も記念日でした。世界中には彼女を記念する多くの教会があり、例えば日本では京都市の聖アグネス教会が有名です。

彼女の名前は、ラテン語で子羊を意味する「agnus」に似ていますが、実際にはギリシャ語の形容詞で「処女の、純潔な、神聖な」という意味の「hagnē」に由来するとされています。しかし、その類似性から、彼女はしばしば子羊と一緒に描かれます。10世紀頃には、ガンダースハイムのロスヴィータが聖アグネスをテーマにした詩を書いています。

聖アグネスの祝日には、特別な習慣があります。2匹の子羊が、ローマのトラピスト修道団からローマ教皇に送られます。この子羊の毛は聖金曜日に刈り取られ、そこから作られたウールで、教皇が新たに聖別された大司教に与えるパリウムが編まれます。

生涯

伝説によれば、聖アグネスは291年にローマの上流階級のキリスト教徒の家庭に生まれました。美しく聡明な少女でしたが、13歳になった304年1月21日、ローマ皇帝ディオクレティアヌスの迫害下で殉教しました。ただし、『黄金伝説』では、コンスタンティヌス1世治下の309年に殉教したと記述されています。

当時、ローマ帝国ではキリスト教徒への迫害が激しく、多くの信徒が信仰を守り殉教していきました。アグネスもそのような状況下で、信仰を貫き神に身を捧げたいと強く願うようになりました。

長官センプロニウスは、アグネスを自分の息子と結婚させようとしましたが、彼女が拒否したため、キリスト教徒であると告発しました。アグネスは異教の女神に供物を捧げるか、売春宿に行くかの選択を迫られましたが、信仰を理由に両方とも拒否しました。彼女は衣服を剥ぎ取られ、売春宿に連れて行かれましたが、神が彼女の髪を伸ばし、体を足まで覆いました。売春宿に入ると、天使が彼女を守り、誰も近づくことができませんでした。

アグネスは拷問を受けても棄教しませんでした。彼女は死刑を宣告されると、「キリストは私の花婿です。最初に私を選んでくださったのはキリストですから、私はその方に従います」と屈しませんでした。火刑が執行されることになりましたが、火は彼女に近づくことなく、二つに分かれました。最終的に、彼女は士官によって剣で刺され、殉教しました。

アグネスの死後、数日後に彼女の墓で祈っていたエメレンティアナという少女が、アグネスの乳母の娘であると主張しました。エメレンティアナは墓から離れようとしなかったため、非キリスト教徒によって石で打たれ殺害されました。彼女も後に聖人として列聖されています。

崇敬

ローマ皇帝コンスタンティヌス1世は、ミラノ勅令によってキリスト教を公認し、自らもキリスト教徒になりました。彼はアグネスの墓の前で自分の娘に洗礼を受けさせたと言われています。後に、墓の上には聖アグネス聖堂が建てられました。

現在、ローマでは2箇所で彼女の聖遺物が崇敬されています。アグネスの遺骸はサンタニェーゼ・フオリ・レ・ムーラ聖堂に、頭蓋骨はナヴォーナ広場の聖アグネス聖堂に保存されています。

大衆文化での聖アグネス

聖アグネスは若い少女たちの守護[[聖人]]であり、セント・アグネス・イブ（1月20日 - 21日）に夕食を抜いて眠ると、夢で未来の夫を見るという民間伝承があります。この迷信は、ジョン・キーツの詩『セント・アグネス祭前夜』によって広く知られるようになりました。

クリスマス・キャロル『ウェンセスラスはよい王様』では、小作人が聖アグネスの泉の近くに住んでいたと歌われています。

1854年に枢機卿ニコラス・ワイズマンが著した歴史小説『ファビオラあるいはカタコンベの教会』では、アグネスは主人公のいとこで親友の、穏やかで気高い女性として描かれています。

イギリスの歌手スティングは、1991年のアルバム『ソウル・ケージ』に「聖アグネスと燃える列車」というタイトルの曲を収録しました。

ギャラリー

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脚注

参考資料

“St. Agnes of Rome”. Catholic Encyclopedia. New Advent.
“Chapter II.”. NPNF2-10. Ambrose: Selected Works and Letters. Christian Classics Ethereal Library.
Rev. Alban Butler. “January 21, St. Agnes, Virgin and Martyr”. The Lives of the Saints.
Jacobus de Voragine. “And next followeth of S. Agnes, and first the interpretation of her name.”. The Golden Legend: Volume II.

関連項目

マリア・ゴレッティ - イタリアの聖人・殉教者。「20世紀の聖アグネス」と讃えられた。

外部リンク

聖人カレンダー 1月21日 聖アグネスおとめ殉教者 - 女子パウロ会
* 卑劣な脅しにも屈しなかった純潔の守護[[聖人]]〜聖アグネスの殉教〜 Christian Press 日刊キリスト新聞

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