聖スルピス会

聖スルピス会とは

聖スルピス会（仏: Compagnie des Prêtres de Saint-Sulpice、略称 P.S.S.）は、カトリック教会において、各教区に仕える司祭たちの養成に特化した教育団体です。その主要な活動は、神学校の設立と運営を通じて、教会共同体を導く将来の司祭たちを教育することにあります。この会は、単に学問的な知識を授けるだけでなく、霊的、人間的な成長を含めた全人的な司祭養成を目指しています。

歴史

聖スルピス会は、フランスの司祭ジャン・ジャック・オリエ（1608年～1657年）によって、1642年にパリで誕生しました。この年、パリのサン＝シュルピス教会が管轄していた神学校の運営がオリエに委ねられ、彼がその校長に就任した出来事が、事実上の会の創立とされています。その後、会の活動を正式なものとするための設立契約が、1645年9月6日に署名されました。

創立者オリエ自身が起草した最初の会憲は、1659年に会員たちの承認を得ました。この会憲は、会の精神と活動の指針を示すものでした。時代の変遷を経て、特に第二バチカン公会議（1962年〜1965年）後の教会刷新の動きを受けて、会憲は改訂の必要に迫られました。現在用いられている会憲は、これらの流れを反映して、1981年12月25日に改訂されたものです。

会の会員数は、歴史を通じて変動が見られます。フランス革命以前は約155名でしたが、20世紀初頭には約400名にまで増加し、その活動範囲を広げていきました。

組織と入会

聖スルピス会に入会するためには、すでに教区司祭である必要があります。これは、会が教区司祭の養成を目的としているため、現職の司祭としての経験と理解が求められるからです。

会の管区は、フランス、カナダ、アメリカ合衆国に置かれ、それぞれの地域で司祭養成活動を展開しています。この国際的なネットワークを通じて、世界各地の教会に貢献しています。

日本における活動

日本においても、聖スルピス会はカトリック教会の司祭養成に重要な役割を果たしてきました。特に、かつて福岡に存在した聖スルピス大神学院（現在の福岡カトリック神学院の前身の一つ）の運営を担い、多くの日本人教区司祭の育成に尽力しました。この活動は、日本のカトリック教会における司祭の質的な向上と安定した供給に貢献しています。

著名な会員（日本関連）

日本のカトリック教会には、聖スルピス会と深い関わりを持つ著名な聖職者が複数います。

ヨセフ高見三明大司教: カトリック長崎大司教区の元大司教です。彼は聖スルピス大神学院で学び、司祭叙階後に聖スルピス会に入会しました。ローマでの学びを経て帰国後、母校である聖スルピス大神学院で教鞭を執り、最終的には院長も務めました。彼の経験は、神学校における養成の質向上に大きく貢献しました。

ペトロ平田三郎司教: 元カトリック福岡司教区司教です。福岡県出身で、1939年に司祭に叙階されました。1941年からは福岡サン・スルピス大神学院で教授を務め、司祭養成に携わりました。その後、1961年に初代大分教区司教に任命され、翌年司教に叙階されました。1969年には福岡教区の第4代司教に就任し、約20年間にわたり教区を率いました。司教団においては、共同訳聖書共同議長や主要委員会の委員長などを歴任し、日本の教会全体に貢献しました。2007年に帰天されました。

* アレクシオ白浜満司教: カトリック広島司教区の現司教です。浦上天主堂で司祭に叙階された後、カナダに留学して聖スルピス会に入会しました。さらにパリ・カトリック学院で専門的な学びを深め、帰国後は福岡サン・スルピス大神学院や東京カトリック神学院で養成者・講師を務め、日本カトリック神学院の院長も歴任しました。彼の経験は、神学校における養成プログラムの充実に生かされています。

聖スルピス会は、その創設以来、教区司祭の専門的な養成を通じて、カトリック教会の基盤を支え続けている組織です。日本における活動も、多くの有能な司祭を輩出し、教会の発展に寄与しています。

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