聖ポール天主堂跡

聖パウロ天主堂跡：マカオの歴史を物語る壮大な遺跡

聖パウロ天主堂跡（サン・パウロ天主堂跡）は、マカオを代表する歴史的建造物の一つです。かつてはアジア最大級のカトリック教会であったこの場所は、現在では南側の石造りのファサードのみが残っており、その壮麗な姿は「大三巴牌坊」とも呼ばれ、多くの人々を魅了しています。

歴史

17世紀初頭、イエズス会によって1602年から1640年にかけて建設された聖パウロ天主堂は、当時アジアにおけるカトリック教会の重要な拠点でした。イタリア人宣教師カルロ・スピノラの指導のもと、建設が進められ、当時マカオに住んでいた日本人キリシタンも建設に携わったとされています。彼らは、日本でのバテレン追放令により故郷を離れた人々でした。

当時のカトリック教会は、宗教改革によってプロテスタントからの弾圧を受けており、その活動を海外に広げていました。アジア初の本格的なキリスト教大聖堂である聖パウロ天主堂には、ヨーロッパのカトリック王族が競って寄進を行いました。しかし、珠江デルタにおける主要港の地位が香港に奪われ、マカオの重要性が低下すると、この天主堂の運命もまた、マカオやポルトガルと同様に衰退に向かいました。

1835年、天主堂は台風による悪天候の中、火災によって全焼しました。現在残っているのは、南側の石造りのファサードと、天主堂を創設し維持したイエズス会士の地下納骨堂のみです。

ファサードの美

ファサードは、小さな丘の上に位置し、66段の石段を登ることで到達できます。彫刻は東洋的な影響を受けており、例えば、七つ頭のヒドラを踏みつける女性は、漢字で「龍の頭を踏みつける聖母」と表現されています。他にも、イエズス会の設立者、イエスによる死神退治、そして最上段には羽を広げた鳩などの彫刻が見られます。

遺跡の保護と修復

長年放置されていたため、ファサードには傾きが生じ、倒壊の危険性が指摘されていました。そこで、マカオ文化局は1990年から1995年にかけて歴史的調査を兼ねた発掘調査を実施しました。その結果、地下納骨堂や基礎が発見され、建物の建築計画が明らかになりました。また、日本人キリシタン殉教者やイエズス会の神学校コレジオの設立者であるアレッサンドロ・ヴァリニャーノ神父を含む修道士たちの遺骨、多くの宗教的な遺物が発見されました。

遺跡はその後修復され、歴史公園として整備されました。ファサードは、可能な限り目立たないようにコンクリートと鉄骨で補強され、訪れる人々が安全に見学できるようになりました。かつては、鉄製の階段でファサードの上段まで登ることができ、上段の窓に硬貨を投げると幸運に恵まれると言われていましたが、現在は遺跡保全のため、階段の使用は禁止されています。遺跡を見下ろすように位置するモンテの砦（大砲台）もまた、この場所の歴史を物語る重要な要素です。

ユネスコ世界遺産

2005年、聖パウロ天主堂跡は、ユネスコの世界遺産「マカオ歴史地区」の一部として正式に登録されました。これは、この場所が持つ歴史的、文化的な価値が国際的に認められたことを意味します。

聖パウロ天主堂跡は、単なる古い建築物ではなく、マカオの歴史、文化、そして宗教的な背景を物語る貴重な場所です。訪れる人々は、その壮大なファサードを目の当たりにし、過去の出来事に思いを馳せることができます。

関連情報

カトリックマカオ教区
原マルティノ：天正遣欧少年使節の一人で、死後この施設に葬られました。
* 聖ポール天主堂跡 - オープンストリートマップ

聖パウロ天主堂跡は、マカオを訪れるすべての人々にとって、必見の場所であり、その歴史的な重みと壮麗な美しさは、訪れる人々の心を揺さぶります。

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