聖書宣教会

聖書宣教会（せいしょせんきょうかい、英語名：Japan Bible Seminary）は、東京都羽村市に本部を置く、特定の教派に属さない超教派のプロテスタント神学校です。1958年に設立されて以来、聖書に基づく確固たる神学教育を通じて、国内外のキリスト教界に福音を宣べ伝える多くの働き人を送り出しています。

設立の背景と理念

本校のルーツは、1958年3月に閉校した東京神学塾にあります。その教師陣と神学生たちが中心となり、同年5月に東京都杉並区に「聖書神学舎」として設立されました。創立者には、舟喜順一氏、羽鳥明氏、ドナルド・ホーク氏らが名を連ねています。教育の根本にあるのは、宗教改革の伝統を受け継ぐ「聖書信仰」であり、聖書全体の権威と真実性を重んじ、その教えに忠実に基づいた神学教育を実践しています。

教育の特色

聖書宣教会の教育における最大の特徴は、聖書そのものを深く探求することにあります。学生は、聖書が書かれた古代の言語であるギリシア語、ヘブル語、アラム語を学び、それらを基にした旧約・新約聖書の緻密な釈義（聖書の意味を解き明かすこと）の授業が非常に充実しています。これにより、聖書の原意を正確に把握する力を養います。

また、学内での講義だけでなく、実際の教会での奉仕を通して実践的な訓練を受ける機会が設けられています。これは、学んだ神学を現場で活かすための重要なステップとなります。

学校の運営形態は、学校法人ではなく宗教法人であり、カトリックの修道院に見られるような、共同生活を通じた人格形成も重視しています。原則として学生は全寮制で生活し、若い世代から経験豊かなシニア世代までが共に学び、支え合いながら成長できる和やかな環境が提供されています。

学生生活と設備

全寮制の生活は、単身寮と家族寮があり、単身寮では共同の食堂を中心に生活を共にします。食事は一部を専門職員が担当しますが、多くの部分を寮生たちが協力して準備することで、奉仕と協調性を育んでいます。また、単身寮では火曜日から土曜日まで毎朝、早天祈祷会が守られています。

学生たちは「研修生会」という自治会を結成しており、学校行事の企画・運営補助（例：ピクニック、リトリート）や、日常業務のサポート（食事の買い出し、施設のメンテナンス、図書館業務など）に主体的に関わっています。これにより、共同体を運営する責任感やチームワークを学びます。

学内には美しいチャペルがあり、大型パイプオルガンが設置されています。このチャペルで、火曜日から土曜日まで毎朝30分程度の礼拝が行われます。さらに、教会音楽科の教師と学生による定期的な音楽イベント（賛美礼拝、教会音楽のひととき）も開催され、礼拝と音楽が豊かな学生生活の一部となっています。

沿革

1958年に杉並区久我山で設立された聖書神学舎は、翌年には杉並区成宗（現在の成田西）へ移転しました。1982年には宗教法人格を取得し、「聖書宣教会」と改称。聖書神学舎はこの宗教法人に含まれる形となりました。教育プログラムも拡充され、1983年に教会音楽科が開設。その後も、教会音楽科の組織変更や、シニアコースの聖書科への発展的改編（2007年決定）などが行われました。1989年には現在の東京都羽村市に移転し、2020年には聖書学研究所が設置されるなど、常に教育内容と環境の整備に努めています。

提供される教育プログラム

聖書宣教会は、様々な目的に合わせた学びの機会を提供しています。

本科: 主に将来、教会の牧師や伝道師として働くことを目指す学生のための中心的なコースです。3年または4年の期間で、北米の神学修士（Master of Divinity）に匹敵するレベルの専門的かつ包括的な神学教育を行います。
聖書科: 2年間で聖書やキリスト教音楽に関する学びを深めるコースです。「聖書専攻」は旧シニアコースを改編したもので、原典に基づく聖書理解を重視します。「教会音楽専攻」は教会での音楽奉仕者を育成するため、声楽や器楽、指揮法、音楽理論などを学びます。
聖書学研究所: 聖書学の研究を推進し、将来の研究者を育成することを目的としています。一定の期間と論文審査を経て、ディプロマ（博士課程相当、修士課程相当）が授与される制度もあり、海外の機関と連携した学位取得の道も開かれています。
聴講制度: フルタイムでの入学が難しい方や、特定の科目を集中的に学びたい一般信徒向けの制度です。取得した単位は、後に正規課程に入学した場合に認められることがあります。
* 拡大教育: 教会や地域で行われる短期の学びの機会です。聖書の基礎を学ぶ聖書講座や、教会合唱の技術を磨く教会合唱講座、軽井沢での集中的な学びを提供する軽井沢バイブル・スクールなどがあります。

人材育成と関係者

聖書宣教会はこれまでに、日本国内だけでなく世界各地で活躍する500名以上の牧師、宣教師、神学者、教会音楽家などを輩出してきました。日本福音同盟の協力会員として、福音派諸教会との緊密な連携を保っています。

歴代の指導者として、創立期から関わった羽鳥明氏、舟喜信氏、また鞭木由行氏、赤坂泉氏らが理事長や校長を務めてきました。出身者の中にも、井出定治氏、大島末男氏、中村敏氏（日本キリスト教史研究者）、内田和彦氏（新約聖書学者）など、日本のキリスト教界において重要な働きを担っている人物が多数います。

聖書宣教会は、聖書への深い献身と実践的な訓練を通じて、現代社会において求められる福音の伝道者や奉仕者を育成し続けている神学校です。

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