聖母の死 (マンテーニャ)

アンドレア・マンテーニャ『聖母の死』

『聖母の死』（伊: La Morte della Vergine, 英: The Death of the Virgin）は、イタリア・ルネサンスの巨匠、アンドレア・マンテーニャが1462年から1464年頃に制作したテンペラ画です。この作品は、その精緻な自然主義、明快な構成、そして揺るぎない構築性から、初期ルネサンス絵画の傑作と高く評価されています。

元々は、マントヴァ侯爵ルドヴィーコ3世・ゴンザーガの依頼により、サン・ジョルジョ城の礼拝堂を飾る一部として制作されました。その後、イングランド王チャールズ1世の手に渡り、彼のコレクションが競売にかけられた際にスペイン王フェリペ4世が落札しました。1829年以降は、マドリードのプラド美術館に所蔵されています。

作品の構成と背景

この作品は、もともと他の絵画と一対をなしていました。それらは、現在フィレンツェのウフィツィ美術館にある『東方三博士の礼拝』、『昇天』、『割礼』の3枚の板絵、そしてフェラーラ国立絵画館にある『聖母の魂を抱くキリスト』です。

描かれている場面は、アンドレア・デル・カスターニョのデザインによるヴェネツィアのサン・マルコ寺院のモザイクに影響を受けています。また、画面の建築は、マンテーニャの義父であるヤーコポ・ベッリーニの素描に見られるヴォールトも参考にしていると考えられています。画面上部の柱が途切れているように見えるのは、絵画が元々より大きかったことを示唆しています。

聖母の死の場面

描かれているのは、『聖書外典』に基づき、大天使ミカエルから余命いくばくもないことを告げられた聖母マリアが、12人の使徒たちを招集する場面です。この場面には、インドで布教活動をしていた聖トマスのみが不在です。

マンテーニャは、この場面を古典主義建築によって構成された空間に配置しています。構図の中心となるのは遠近法の探求で、床の敷石の幾何学的な形、身体像の大きさの調整、そして消失点として機能する背後の窓が、鑑賞者の目を聖母が横たわるベッドへと導きます。個々の人物の表情や仕草も丁寧に描き込まれ、背景の風景もまた注目に値します。サン・ジョルジョ城の建物や橋が詳細に描かれた湖の景色は、実在する風景を描いた初期のイタリア絵画の一つとされています。

作品の特徴

• - 精緻な自然主義: 人物、建築、風景の細部まで丁寧に描き込まれ、写実的な表現が特徴です。
• - 古典主義建築: 場面を構成する建築は、古代ローマ建築を思わせる重厚な雰囲気を持っています。
• - 遠近法: 床の敷石や人物の配置によって、奥行きのある空間を表現しています。
• - 個性的な人物描写: 使徒たちの表情や仕草は、それぞれ異なり、個性が豊かに表現されています。
• - 背景の風景: サン・ジョルジョ城周辺の実際の風景が描かれており、写実主義的な要素が感じられます。

ギャラリー

参考文献

『プラド美術館ガイドブック』、プラド美術館、2009年刊行　ISBN 978-84-8480-189-4
ルチアーノ・ベルティ、アンナ・マリーア・ペトリオーリ・トファニ、カテリーナ・カネヴァ『ウフィツィ美術館』、みすず書房、1994年　ISBN 4-622-02709-7

外部リンク

プラド美術館公式サイト, アンドレア・マンテーニャ『聖母の死』
Web Gallery of Artサイト, アンドレア・マンテーニャ『聖母の死』
* artonline.itのページ

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