聖母子と聖ヨセフ、聖エリサベト、洗礼者聖ヨハネ

『聖母子と聖ヨセフ、聖エリサベト、洗礼者聖ヨハネ』は、イタリアルネサンスの巨匠アンドレア・マンテーニャによって1490年頃に制作されたテンペラ画です。カンヴァスに接着テンペラで描かれ、金箔のハイライトが施されたこの作品は、62.9cm x 51.3cmの大きさで、現在はテキサス州フォートワースのキンベル美術館に所蔵されています。

この絵画の中心には、幼子イエス・キリストが描かれています。マンテーニャは、イエスを正面向きのコントラポストのポーズで表現しており、これは古代ギリシャ・ローマの彫刻に見られる表現様式です。特に、若いディオニュソス（バッカス）の彫刻がその影響を与えたと考えられています。イエスは聖母マリアの膝の上でバランスをとりながら立っており、その姿は神聖さと幼さの両方を兼ね備えています。

画面左側には聖ヨセフが描かれており、聖家族の一員としての彼の存在を示しています。一方、右側には聖エリサベトと彼女の息子である洗礼者聖ヨハネが描かれています。聖エリサベトは、マンテーニャの別の作品『勝利の聖母』に描かれた聖エリサベトと同一人物であると考えられています。これらの聖人たちが加わることで、作品全体の神聖さと物語性が深まっています。

この絵画は、その構図や表現から、私的な祈祷のために制作された可能性が高いと考えられています。マンテーニャは、宗教的な主題を個人的な感情や信仰と結びつけることに長けており、この作品もその一例と言えるでしょう。

歴史的背景

この作品がカンヴァスを使用している点や、マンテーニャの別の作品である『トリヴルツィオの聖母』との様式的な類似性から、この作品はマンテーニャの画業の後期に制作されたと考えられています。19世紀半ばにイタリアを離れた後、1909年までにはマルセイユの個人コレクションに収蔵されていました。その後、1986年6月21日にモナコでサザビーズによってオークションにかけられ、ヨーロッパの個人コレクターに売却されました。そして、1987年にニューヨークの市場でキンベル美術館が購入し、現在に至っています。

この作品は、マンテーニャの卓越した技術と芸術的才能を示す重要な作品の一つであり、彼の宗教画における革新的なアプローチを理解する上で欠かせないものです。ルネサンス美術に関心のある人々にとって、この作品は必見と言えるでしょう。

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