聴導犬

聴導犬とは

聴導犬とは、聴覚に障害を持つ方の生活をサポートするために、特別な訓練を受けた犬のことです。聴覚障害者の「耳」となり、生活に必要な音を知らせ、危険から守る重要な役割を担っています。

聴導犬の役割

聴導犬は、以下のような音を識別し、飼い主に知らせることで、安全で安心な生活をサポートします。

火災報知機の警報音
玄関のブザーや電話の着信音
目覚まし時計のアラーム
その他の生活に必要な音

これらの音を飼い主に知らせる際は、音の種類に応じて異なる合図を送ります。例えば、火災報知機の音には吠えて知らせ、玄関のブザー音には飼い主をドアまで誘導するなど、具体的な行動で飼い主に伝えます。特に、火災報知機の警報音は、睡眠中の飼い主を起こし、避難を促すなど、命を守る上で非常に重要な役割を果たします。

聴導犬は、雑種犬が主な犬種として活躍しており、保護犬の中から適性のある犬が選ばれることも多いです。聴導犬の育成は、動物福祉の観点からも重要な意義を持っています。聴導犬が身につけるケープは、オレンジ色や黄色が一般的ですが、団体によっては異なる色を使用している場合もあります。

聴導犬の歴史

聴導犬の歴史は、1966年にアメリカで始まりました。聴覚障害を持つ娘のために飼われたジャーマンシェパード犬が、ドアベルの音を教えるようになったことがきっかけです。その後、組織的な聴導犬育成プログラムが設立され、アメリカやイギリスを中心に普及が進みました。

日本では、1981年に聴導犬普及委員会が設立され、1983年に最初の聴導犬が誕生しました。しかし、その数は盲導犬に比べるとまだまだ少なく、潜在的なニーズに対して供給が不足しているのが現状です。

日本の現状

2021年4月1日現在、日本国内で活躍している聴導犬の数は63頭です。潜在的な聴導犬を必要としている人は1万人いると推測されているため、聴導犬の数は圧倒的に不足していると言えます。聴導犬は、身体障害者補助犬法の適用を受けており、公共施設や商業施設などでの受け入れが義務付けられています。しかし、実際には受け入れを拒否される事例も後を絶ちません。法律に対する理解不足や、誤解が原因となっていることが多いです。

聴導犬の育成

聴導犬の育成は、専門の訓練団体によって行われています。厚生労働省が指定する認定団体は、全国に6団体あります。聴導犬の訓練は、犬の特性を理解し、飼い主のニーズに合わせた高度な訓練が必要です。訓練士だけでなく、医師や言語聴覚士などの専門家が連携し、聴導犬の育成に取り組んでいます。

聴導犬候補の犬は、保護犬の中から選ばれることが多いです。犬たちは、まずソーシャライザーと呼ばれるボランティアによって育てられ、人間との信頼関係を築きます。その後、専門の訓練士による訓練を受け、聴導犬としての能力を身につけます。

また、聴導犬の育成には、ユニークな取り組みも行われています。例えば、引きこもりの若者が子犬を育てることで、聴導犬の育成と若者の自立を支援するプログラムなどがあります。このような取り組みは、聴導犬の育成を促進するだけでなく、社会的な課題の解決にも貢献しています。

日本の著名な聴導犬

日本では、身体障害者補助犬法が施行される以前は、聴導犬は公共交通機関の利用が認められていませんでした。しかし、2001年に聴導犬「みかん」が公共交通機関の同伴試験に合格し、その後、他の聴導犬も同様の試験に合格しています。また、2003年には、認定試験制度に合格した最初の聴導犬「美音（みお）」が誕生しました。

聴導犬の中には、1頭の犬を夫婦などで共有するタンデム利用も行われています。聴導犬「しん」は、日本で最初のタンデム聴導犬として活躍しました。

その他

日本で最初の国際アシスタントドッグ協会（ADI）国際認定「聴導犬および介助犬インストラクター」は、有馬もと氏（日本聴導犬協会）です。

聴導犬を扱ったノンフィクション・絵本

聴導犬をテーマにしたノンフィクションや絵本も数多く出版されています。これらの作品を通して、聴導犬の役割や聴覚障害者の生活について理解を深めることができます。

『聴導犬シンディ誕生物語』（パトリシア・カーチス／小学館／1998年）
『聴導犬捨て犬コータ - あなたの「耳」になりたい!』（桑原崇寿／ハート出版／1998年）
『聴導犬ものがたり - 捨て犬みかんとポチ』（有馬もと／MAYUMI(写真)／佼成出版社／2000年）
『教えてもっと、美しい音を - 聴導犬・美音と過ごす幸せな日々』（松本江理／アーティストハウスパブリッシャーズ／2003年）
『聴導犬・美音と過ごす幸せな日々』（松本江理／角川文庫／2006年）
『わたしは心を伝える犬 - ゆんみの聴導犬サミー』（ゆんみ／ハート出版／2005年）
『聴導犬ロッキー - 犬の訓練ひとすじ、藤井多嘉史ものがたり』（桑原崇寿／日高康志(画)／ハート出版／2006年）
『犬たちがくれた音 - 聴導犬誕生物語』（高橋うらら／MAYUMI(写真)／金の星社・フォア文庫／2015年）
『聴導犬のなみだ - 良きパートナーとの感動の物語』（野中圭一郎／プレジデント社／2017年）
『聴導犬くんれん生 ふく』（鈴木びんこ／新日本出版社／2017年）
『聴導犬こんちゃんがくれた勇気 - 難病のパートナーを支えて』（高橋うらら／岩崎書店／2018年）

参考文献

『マンガでわかる聴導犬 - もっと身近に! 耳の不自由な人を守る補助犬』有馬もと(著)、上原麻美(マンガ)、明石書店、2012年1月発行 ISBN 978-4-7503-3519-3

関連文献

『聴導犬 - 社会でかつやくするイヌたち』（こどもくらぶ／田中ひろし(監修)／鈴木出版／2002年）
『はたらく犬 第1巻 [盲導犬]]・聴導犬 - 安全をいつも確認する犬たち』（[[日本補助犬協会]／学研プラス／2004年）
『しらべよう!はたらく犬たち 第1巻 盲導犬・聴導犬・介助犬』（日本盲導犬協会／ポプラ社／2010年）
『新・はたらく犬とかかわる人たち 第1巻 福祉でがんばる! 盲導犬・聴導犬・介助犬 』（こどもくらぶ(編)／あすなろ書房／2018年）
『調べよう!バリアフリーと福祉用具 第4巻 手話・聴導犬 ほか - 「聞く」をたすける』（渡辺崇史(監修)／ポプラ社／2019年）
『はたらく犬たち 盲導犬・聴導犬・セラピードッグ ほか』（アルバ(編)／金の星社／2019年）

関連項目

日本補助犬協会
日本聴導犬協会
身体障害者補助犬法
身体障害者補助犬
盲導犬
介助犬
聴導犬育成の会
すずがくれた音 - 聴導犬を題材にしたTBS系（愛の劇場）のテレビドラマ
F.B.EYE!! 相棒犬リーと女性捜査官スーの感動!事件簿 - 聴導犬を題材にしたアメリカのテレビドラマ

外部リンク

社会福祉法人日本聴導犬協会
* 公益社団法人日本聴導犬推進協会

聴導犬は、聴覚障害者の生活を支える重要な存在です。その役割を理解し、聴導犬と共に行動する人たちを温かく見守ることが大切です。

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