胡拱辰

胡拱辰（こ きょうしん）は、明代中期に活躍した官僚であり、字を共之（きょうし）と称しました。永楽15年（1417年）に生まれ、正徳3年1月28日（1508年2月28日）に92歳でその生涯を閉じました。彼の出身は、厳州府淳安県です。

初期の官僚生活と国政への提言

正統4年（1439年）に科挙に合格し、進士となった胡拱辰は、黟県（いけん）の知県としてそのキャリアをスタートさせました。この地で善政を敷き、その手腕は高く評価されました。翌年には監察御史に抜擢され、国政に対する提言として時弊八事を上疏しました。しかし、父の死去に伴い、一度官を辞して故郷に戻ります。

動乱期の活躍と地方官としての経験

正統14年（1449年）、景泰帝が即位すると、服喪期間中の者にも官への復帰が求められる中で、胡拱辰も再び中央に召喚されます。この際、彼は将軍の選抜、国防の強化、徳の涵養、そして災害の根絶について度々上疏し、その見識を示しました。その後、貴州左参政として地方に赴任します。ここでは、白水堡の仡佬族（きつろうぞく）の指導者、沈時保（しんじほ）が明に服従しようとしなかったため、総兵官の方瑛（ほうえい）に命じて沈時保を捕らえさせ、反乱を鎮圧しました。さらに、梁珤（りょうほう）らが畢節（ひっせつ）に派遣され、水西宣慰使（すいせいせんいし）の隴富（ろうふ）による反乱も鎮圧しました。その後、母の死去に伴い再び官を辞しますが、この時、賄賂を受け取ったとして御史から弾劾され、浙江で取り調べを受けることになります。しかし、潔白が証明されたため、広東参政に転任しました。

南京での要職歴任と晩年

広西・四川の左右布政使を歴任し、その間、反乱鎮圧に功績を挙げた胡拱辰は、成化8年（1472年）に南京右副都御史に任じられ、中央での要職を担うこととなります。成化9年（1473年）には提督操江（ていとくそうこう）を、成化11年（1475年）には南京兵部右侍郎（なんきんへいぶうじろう）を歴任しました。皇太子位が長らく空位であったことから、南京吏部尚書の崔恭（さいきょう）らと共に、皇太子の早期冊立を請願しました。成化14年（1478年）には左副都御史に転じ、食糧備蓄を監督する責任者となりました。成化20年（1484年）には南京工部尚書に転じ、その職務を全うしました。

弘治14年（1501年）、老齢を理由に致仕し、その後の生活を送りました。正徳3年（1508年）1月28日、92歳でこの世を去りました。死後、その功績が認められ、太子少傅（たいししょうふ）の位が追贈され、諡（おくりな）として荘懿（そうい）が贈られました。

胡拱辰の著作

胡拱辰は、官僚としての活動以外にも、多くの著作を残しています。『南海神祠嘉恵録』、『南海神祠事実』6巻、『鶏肋集』、『錦官稿』、『従征稿』、『華封記事』、『山居雑詠』、『亦拙斎詩集』、『敬所雑著』など、多岐にわたる分野の著述を行いました。

まとめ

胡拱辰は、明代の官僚として、地方官から中央の要職までを歴任し、その間、善政や反乱鎮圧に尽力しました。また、国政に対する提言も積極的に行い、その見識の高さを示しました。彼の生涯は、明代の政治史における重要な一例として、今日に語り継がれています。

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