黟県

黟県：悠久の歴史と自然が織りなす桃源郷

安徽省黄山市に位置する黟県（いけん）は、黄山市で最も小さく、そして最も古い県です。かつては黝、広徳国、愬鹵と呼ばれていました。四方を山に囲まれた盆地であり、その美しい景観から「小桃源」とも称されてきました。

概要

黟県の土地の大部分は森林に覆われており、豊かな自然が特徴です。温暖な気候と豊富な降水量に恵まれ、茶や桑などの栽培が盛んに行われています。また、シイタケ、木耳、香榧などの特産品も有名です。

16世紀には商業が発展し、4千棟を超える精巧な建築物が建てられました。これらの建築物は「皖南民居」と呼ばれ、その様式は明朗で風格があります。世界遺産に登録された西逓村と宏村も黟県内に位置しています。

映画のロケ地としても有名で、『グリーン・デスティニー』をはじめ、数多くの作品が黟県で撮影されました。

地理

黟県は、北に黄山、南に白岳を擁し、四方を山で囲まれた盆地に位置しています。山々が外界との隔たりとなっているため、古くから「小桃源」と呼ばれてきました。青弋江が県内を流れ、長江へと注いでいます。

現在も3,600棟の古民居が保護されており、皖南の中心地としての役割を果たしています。西逓、宏村、南屏、関麓、屏山に残る古民居は、その厳格な構造と精巧な工芸で知られています。特に西逓と宏村は世界遺産に登録されており、その価値が国際的に認められています。

歴史

黟県の歴史は古く、秦の時代に黝県として成立しました。その後、広徳国、愬鹵と改称された時期もありましたが、208年に孫権によって黟県と改められました。

行政区分の変遷を経て、1959年に再び黟県が設置され、現在に至ります。

経済

黟県は、その地理的特性を生かして観光業を主要な産業としています。2003年には111万人の観光客が訪れ、総収入は2.7億元に達しました。これはGDPの50%以上を占めています。観光業のほか、絹糸生産、農産物加工、土産物の製造も盛んです。

製糸紡織業

絹関係の産業は、観光業と並んで黟県の基幹産業です。桑の栽培が盛んに行われ、生糸や練糸の生産量は安徽省内でも上位を占めています。

農業副産物加工

農業副産物加工も盛んで、糖水板栗（むき栗の水煮）の生産量は中国一を誇ります。また、臘八豆腐や宏潭豆腐乳などの伝統的な食品も生産されています。

土産物の製造

観光業の発展に伴い、土産物製造業も発展を遂げました。文房四宝（筆・墨・紙・硯）と呼ばれる木彫り、レンガ彫り、石彫りの製品は、国内外で人気を集めています。

特産品

泗渓三宝：苦丁茶、香榧、葛粉
苦丁茶：苦味が特徴的なお茶
香榧：シナガヤの実。豊富な栄養素を含んでいます。
臘八豆腐：旧暦12月8日(臘八)前後に作られる豆腐の保存食
食桃：米粉で作られた団子

交通

鉄道：杭昌高速鉄道 黟県東駅、皖贛線
道路：黄浮高速道路

観光

世界遺産：西逓村、宏村
* その他：南屏、関麓、屏山、塔川秋色、木坑竹海など、数多くの観光スポットがあります。

黟県は、陶淵明が『桃花源記』で描写した理想郷を彷彿とさせる、美しい自然と歴史的な景観が魅力の地です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してみてください。

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