能仁寺 (真岡市)

大雄山 能仁寺

栃木県真岡市根本に位置する能仁寺は、臨済宗妙心寺派に属する寺院で、山号を大雄山と称します。本尊として安置されている釈迦三尊は、栃木県の指定文化財にもなっています。元々は円覚寺派に属していましたが、後に妙心寺派に改宗しました。

歴史

能仁寺の創建には、足利尊氏にまつわる伝説が残されています。尊氏が元服の頃、夢に僧形の観音菩薩が現れ、「下野国根本村の地中に眠る観音を祀れば武運が開ける」と告げました。そのお告げに従い、掘り起こされた観音像を祀るために観音堂が建てられ、その5年後に能仁寺が創建されたと伝えられています。

寺名の「能仁」は、釈迦を意味し、南宋の温州雁蕩山能仁寺に由来します。この地が雁蕩山に似ていることから名付けられたとされ、温州能仁寺は、無学祖元が蒙古兵に臨んだ際に偈を唱えたことで知られています。

釈迦堂（仏殿）に安置されている釈迦三尊像は、本尊を恵心僧都、脇侍の文殊菩薩を西京仏師康久が作ったと伝えられています。足利尊氏からは、永代千貫の朱印地が寄進され、鎌倉円覚寺流の十刹の一つに数えられました（関東十刹）。

1419年（応永26年）には、称光天皇が蒙古使に勅して「関東名藍」の四字を書かせ、扁額として能仁寺に賜りました。これは、関東でも優れた七堂伽藍であることを意味します。

しかし、能仁寺は度重なる火災に見舞われました。天正年間に仏殿と山門を除く全てを焼失し、その後再建されましたが、1609年（慶長14年）には再び兵火により諸堂山門が灰燼に帰しました。幸いにも勅額と仏殿は難を逃れることができました。

1615年頃（元和年間初め）には、一空宗愚と虚応宗保らが再建を企て、妙心寺派の仏法を伝承し、民衆を教化しました。1718年（享保3年）には、武蔵神田の木村将監によって銅鐘が鋳造されました。

その後も、1779年（安永8年）と1786年（天明6年）に火災や山崩れが発生し、多くの堂宇が失われましたが、剛梁和尚によって再建されました。さらに、南渓和尚や月岡和尚などによって修繕が加えられ、1890年（明治23年）には寺田祖禅和尚による大修理が完成しました。

寺宝

能仁寺には、以下のような貴重な寺宝が伝えられています。

県指定文化財

鎌倉期 善光寺式阿弥陀如来中尊（青銅）: 鎌倉時代の作とされる阿弥陀如来像です。
鎌倉期〜南北朝 宝冠釈迦如来三尊（寄木造り玉眼）: 鎌倉時代から南北朝時代にかけて作られた釈迦如来三尊像です。
享保三年 銅鐘（武蔵神田 木村将監造）: 1718年に鋳造された銅鐘です。

市指定文化財

釈迦堂（仏殿　鎌倉〜南北朝）: 鎌倉時代から南北朝時代にかけて建立された仏殿です。

その他

足利尊氏木像: 足利尊氏の木像です。
足利尊氏位牌: 足利尊氏の位牌です。
今東光墨跡: 今東光の墨跡です。

沿革

能仁寺は、1343年（康永2年）に那須黒羽雲巌寺開山の仏国国師の法嗣である不識妙宥を開山、足利尊氏を開基として建立されました。1585年（天正13年）には、水谷正村（水谷蟠龍斎）が田野城主羽石内蔵介を攻討した際、その影響で釈迦堂のみを残して焼失しました。その後、山崩れなどの災害にも見舞われましたが、仏殿（釈迦堂）と扁額は難を逃れたとされています。

余談

『仏国国師語録』には、高峰顕日の弟子の秀巌玄梃（1320年没）が能仁寺に住んでいた記録が残っており、鎌倉時代には既に開創されていた可能性が示唆されています。また、能仁寺には鎌倉時代の阿弥陀像があることから、この説を裏付けています。

出典

『真岡の歴史』
『真岡史事典』
『仏国国師語録』
* 『日本の美術』No.507 浅見龍介　至文堂

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