能勢氏

能勢氏（のせし）

能勢氏は、清和源氏の流れを汲む氏族で、源頼光を祖とする一族とされています。摂津国（現在の大阪府北部）の能勢地方を本拠地とし、鎌倉時代から江戸時代にかけて、この地域を支配しました。能勢氏の家紋は、切竹矢筈十字や獅子牡丹などが用いられています。

発祥

能勢氏の祖先については諸説ありますが、有力な説は、源頼光の玄孫である国基を祖とするものです。また、多田源氏の惣領である源頼盛の三男高頼の後裔であるという説もあります。能勢地方は、源満仲以来の源氏の本拠地である多田に隣接しており、古くから源氏との関わりが深い土地でした。

能勢氏の伝承によれば、源頼光の長子頼国が最初にこの地に入部し開発したとされていますが、確実な史料は確認されていません。国基は平安時代後期から末期の人物であり、能勢氏の直接の祖と考えられています。一方で、太田亮は、摂津源氏は仮冒であり、出自は古代能勢郡領家の後裔であると主張しています。

高頼の子孫とする系図にも裏付けがなく、国基の系統についても諸説があり、明確なことは分かっていません。

歴史

鎌倉・南北朝時代

鎌倉時代に入ると、国基の後裔は鎌倉幕府の御家人となり、『吾妻鏡』には、1195年の東大寺供養に随行する兵の中に「野瀬判官代」とその同族「安房判官代」の名が見られます。承久の乱では、多くの畿内の武士が京方についた中で、能勢氏は幕府方として戦ったとされています。

南北朝時代には、北朝方に与したとされていますが、南朝方であった多田頼貞の系譜を引くとも伝えられており、明確ではありません。建武の新政では、頼貞が摂津国能勢郷の目代を務めましたが、足利尊氏の離反後は南朝方として各地で戦い、備前国で自害しました。その子頼仲は、尊氏に与したとされています。

室町・戦国時代

室町時代には、幕府の奉公衆として摂津の有力国人となり、摂津国守護である細川氏の被官となりました。応仁の乱では、細川勝元に属して東軍として戦い、能勢頼弘とその子頼満が戦死しました。

戦国時代には、能勢の丸山城を本拠地とし、芥川山城や山城国の今里城などを居城として、勢力を拡大しました。1582年の本能寺の変では、能勢頼次が明智光秀方に加勢しましたが、光秀の滅亡後に能勢を追われ、先祖の多田頼貞に所縁のある備前国内に潜伏したとされています。その後、能勢は島津氏の在京賄料となりました。

豊臣秀吉の没後、頼次は弟である東寺の僧金剛院を介して徳川家康に召し出され、1599年に家名を再興しました。関ヶ原の戦いでは、家康に属して戦功を立て、能勢郡地黄3000石余を与えられ、旧領を回復しました。その後加増され、石高は5300石余となりました。しかし、『多田雪霜談』では、1584年の枳根之宮合戦で敗色濃厚となった能勢氏を立て直すため、頼次が秀吉に面会後、地黄城に帰還したとされ、頼次の動向には不明な点が多いとされています。

江戸時代

江戸時代には、能勢氏は数家に分かれ、それぞれ旗本として存続しました。能勢本家は地黄陣屋を拠点とし、4000石の旗本として幕末まで続きました。幕末期には、庶家を含めて一族は14家を数え、総知行高は1万3千石に達したとされています。現在、能勢氏の菩提寺である清普寺の境内に、一族の墓所があります。

明治以降

明治維新期の当主能勢頼富は、幕末に幕府の役職を務め、従五位下日向守に叙任されました。維新後には、朝廷に早期に帰順し、朝臣に列しましたが、諸侯への昇格は却下されました。その後、下大夫席は官位返上となり、無位となったため、日向守から源一に改名しました。その後、士族に編入され、兵庫県貫属となりましたが、その後の動向は不明です。

宗教

能勢地方は、東部ではキリシタン大名の高山右近の影響でキリスト教徒が多かった一方、中部と西部では真言宗の寺院が多かったとされています。徳川家康によるキリスト教禁止令に近い時期に、頼次は能勢一帯の神社仏閣を日蓮宗に改宗させました。これにより、頼次がキリシタンを弾圧したと誤解されることもありますが、頼次の領地は真言宗の寺院が中心であったため、これは事実とは異なります。頼次は能勢妙見山を篤く信仰していたため、領民に対する改宗の強要は強引なものであったらしく、「能勢のいやいや法華」という言葉が伝わっています。東部では隠れキリシタンも多く存在し、長崎地方をしのぐ数の遺物が発見されていますが、中部と西部ではそのような遺物は見られません。能勢氏の墓所は、能勢町の清晋寺と東京都大田区の池上本門寺にあります。

系譜

（省略）

脚注

（省略）

参考文献

沼田頼輔『国立国会図書館デジタルコレクション 日本紋章学』明治書院、1926年3月。
能勢町史編纂委員会 編『能勢町史』 第1、能勢町、2001年5月。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年11月。

史料

『尊卑分脈』
『多田雪霜談』

関連項目

野瀬氏
野間資持
妙見山 (大阪府・兵庫県)
* 宮野木町

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