芥川山城

芥川山城：戦国時代を彩る山城の雄姿

大阪府高槻市、三好山山頂にそびえる芥川山城は、国の史跡に指定されている戦国時代の山城です。その規模の壮大さ、そして良好な状態で現存する遺構は、当時の山城建築を知る上で極めて貴重な存在となっています。

芥川山城の立地と概要

標高182.6mの三好山に築かれた芥川山城は、飯盛山城と並んで大阪府下最大級の山城跡として知られています。東隣の帯仕山はさらに標高が高いものの、山頂がなだらかであるため城郭には適さず、芥川山城は摂津峡の険しい断崖など、天然の要害となる地形を巧みに利用して築城されたと考えられています。北、西、南の三方を芥川に囲まれたその立地は、まさに天然の要塞と言えるでしょう。

古文書には「芥川城」としか記されておらず、高槻市殿町周辺にあった別の城との区別が曖昧なため、現在では便宜上「芥川山城」と呼ばれています。この地は、細川政元以来の細川政権、そしてその後継である三好政権の本拠地として認識されており、芥川山城の築城も、その政治的背景と深く関わっていると考えられています。

築城から廃城まで：激動の戦国時代を生き抜いた山城

『宇津山記』の永正13年（1516年）1月には、能勢頼則が城主を務める「芥川新城」で連歌会が開かれたという記録が残っています。芥川山城は永正12年（1515年）から同時期にかけて、細川高国によって築かれたと推定され、『瓦林政頼記』には、昼夜兼行で500～300人の人夫が動員されたと記されています。

その後、能勢氏、細川晴元、三好長慶ら、数々の武将が芥川山城を支配しました。天文2年（1533年）、細川晴元がここに拠点を移し、城は繁栄を極めますが、天文15年（1546年）には晴元と対立した細川氏綱方勢力に城が奪われるなど、激しい攻防を繰り返します。

天文18年（1549年）、三好長慶が細川晴元を京都から追放すると、芥川山城は三好氏の拠点となります。永禄3年（1560年）、長慶が飯盛山城に移ると、息子の三好義興が城主となりますが、義興は若くして亡くなり、その後は三好長逸が城主を務めたとみられます。

永禄11年（1568年）、織田信長が足利義昭を奉じて上洛すると、芥川山城は信長の軍勢によって攻撃を受け、長逸は城を放棄して逃亡します。その後、足利義昭が一時的に滞在した後、和田惟政、そして高山飛騨守父子が城主となりました。元亀4年（1573年）頃には廃城となり、約60年の歴史に幕を閉じました。

芥川山城の構造と特徴

芥川山城は、東曲輪群、中央曲輪群、西曲輪群の３つの主要なブロックから構成されています。

東曲輪群は城への入り口付近に江戸時代末期の石垣が見られますが、これは廃城後のもの。中央曲輪群には、山城としては珍しい石垣が残っています。その築造技術は戦国時代のものとしては異例であり、三好長慶の時代、あるいは最後の城主である高山父子によるもの、織田信長の築城技術を取り入れたものなど、諸説が飛び交っています。また、出丸跡には櫓が建っていた可能性も示唆されています。

西曲輪群の本丸跡からは、高槻市教育委員会の発掘調査で礎石跡が発見され、御殿的な施設の存在が確認されました。山城では山頂に簡単な施設しか設けず、麓に居館を構えるのが一般的ですが、芥川山城では山頂に居住空間が造られていた点が特筆されます。この調査では、1556年の火災跡も発見され、この施設は三好長慶の時代には既に存在していたことが明らかになっています。

アクセス

公共交通機関では、JR京都線高槻駅から高槻市バスを利用し、塚脇バス停から徒歩約25分です。駐車場は近隣にありません。

終わりに

芥川山城は、その規模、遺構の保存状態、そして激動の戦国時代を象徴する歴史的意義から、日本の歴史、そして山城建築史において重要な史跡と言えるでしょう。今後の更なる調査研究によって、その全貌が明らかになることに期待したいものです。

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