能勢街道

能勢街道：大阪と丹波を結ぶ歴史の道

能勢街道は、大阪府大阪市北区中津を起点に、池田市を経由し、兵庫県豊能郡能勢町にある妙見山へと至る歴史深い旧街道です。かつては、大阪と丹波地方を繋ぐ重要な交通路として栄え、物資の輸送や人々の往来に大きく貢献しました。現在でも、その一部区間は生活道路として利用されています。

歴史と地理：

能勢街道は、中国街道から分岐し、十三、三国、庄内、服部、岡町、石橋、池田、木部、古江、多田、一の鳥居といった集落を通り抜け、妙見山へと至る、全長約40キロメートルに及ぶ道程でした。

この街道は、単なる交通路としてだけでなく、経済的にも重要な役割を果たしました。池田や能勢地方で生産された酒、衣類、木材などが大阪へと運ばれ、一方、丹波地方から米、栗、炭、銀、銅といった産物が能勢街道を通じて大阪へと運び込まれました。

さらに、能勢街道沿道には、服部天神宮、東光院、原田神社、多田神社など多くの社寺が点在しており、参拝者も多く訪れました。中山寺や勝尾寺といった、街道から少し入った場所にある寺社への参拝路としても賑わいを見せていました。

明治9年（1876年）には、太政官達60号で道路の種類および等級が定められた際、大阪府下で3本のみの一等縦貫線として指定されるなど、その重要性が改めて認識されました。

しかし、明治27年（1894年）には、岡町から池田までの区間において、より平坦な新道が開通しました。この新道は「新能勢街道」と呼ばれ、現在の国道176号ルートとほぼ一致しています。これは、それまでの山道が急峻で物資運搬に支障をきたしていたためです。

現在では、大阪市から池田市までは阪急電鉄宝塚線と国道176号が、池田市から妙見山麓までは国道173号および国道477号が並行しています。また、川西市以北では能勢電鉄妙見線が並行し、鉄道や道路網の整備により、かつての街道の役割は大きく変化しました。それでも、現在も多くの区間で旧街道の道筋が残っており、生活道路として利用されています。岡町や石橋阪大前駅周辺では、商店街として賑わいを見せています。

阪神淡路大震災では、街道沿いの古い木造家屋が大きな被害を受け、歴史的建造物が失われたことは残念な事実です。

宿場と名産品

能勢街道には、服部、石橋（瀬川宿）、池田といった宿場がありました。石橋は西国街道との結節点でもありました。

池田は、特に名産品が豊富でした。中でも有名なのは池田炭で、切り口が菊の花のように美しいことから「菊炭」と呼ばれ、茶道用として珍重されました。千利休も愛用したと伝えられています。また、清酒「呉春」も池田を代表する名産品です。さらに、かつては猪肉も名物であり、上方落語「池田の猪買い」にも描かれています。

能勢街道を彩るもの

能勢街道は、単なる交通路としてだけでなく、歴史、文化、経済など様々な側面から、この地域の発展に貢献しました。現在ではその面影は薄れつつありますが、残された道筋や沿道の史跡は、人々の歴史への関心を高め、この地域のアイデンティティを形成する上で重要な役割を果たしています。

参考文献

・近畿道ものがたり ラジオ大阪サイト
・旧能勢街道岡町界隈 豊中市サイト

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