能満寺古墳

能満寺古墳について

能満寺古墳は、千葉県長生郡長南町芝原に位置する前方後円墳です。この古墳は、千葉県指定史跡となっており、その歴史的価値が認められています。

立地と周辺の状況

古墳は、千葉県中部の外房地域、一宮川の支流である埴生川と長楽寺川が合流する地点の西側丘陵上に築かれています。周辺には、この古墳の他に2基の小円墳と2基の小方墳が存在しており、古墳群を形成していますが、これらの古墳と能満寺古墳との関係はまだ解明されていません。能満寺古墳は、この地域における古墳文化の中心的な存在であったと考えられます。

発掘調査

これまでに2度の発掘調査が行われています。1947年（昭和22年）には最初の発掘調査が行われ、1995年（平成7年）には墳丘周縁の確認調査が実施されました。これらの調査によって、古墳の構造や出土品に関する貴重な情報が得られています。

墳形と構造

能満寺古墳は、前方後円墳という形状をしています。前方部を西方向に向けており、墳丘には段築が見られません。また、葺石や埴輪も確認されていません。墳丘の周囲には周溝がなく、後円部の裾に浅い落ち込み状の遺構が確認されています。埋葬施設は後円部の頂に設けられた木炭槨で、これは古墳の主軸と平行に配置され、長さ7.5メートル、幅2メートルを測ります。木棺を木炭で覆った構造は「舟形木炭槨」と呼ばれ、独特の形状をしています。

出土品

木炭槨内からは、銅鏡、装身具、武器、農工具などの副葬品が多数出土しています。具体的には、2枚の銅鏡、ガラス製の丸玉や小玉、鉄剣、鉄刀、銅鏃、扁平楔形鉄器、鑿、鉇、刀子、鎌などが含まれます。また、木炭槨の上からは、葬送儀礼に使われたと思われる土師器（高坏、器台、底部穿孔壺）が破砕された状態で発見されています。これらの出土品は、当時の文化や技術を知る上で重要な資料となっています。

築造時期

能満寺古墳は、古墳時代前期の4世紀代、具体的には4世紀後半以前に築造されたと推定されています。房総半島太平洋側における前期古墳としては最古級のものであり、その後の油殿1号墳とともに、この地域の政治情勢を考察する上で重要な古墳と位置づけられています。

墳丘規模

墳丘の規模は以下の通りです。

墳丘長：73.5メートル
後円部：直径43.2メートル、高さ約7メートル
前方部：幅33.7メートル、高さ約4メートル

以前は前方後方形とする説もありましたが、現在では前方後円形とされています。墳丘は、墳裾の一部を除いて盛土によって構築されています。

文化財としての指定

能満寺古墳は、1958年（昭和33年）4月23日または1975年（昭和50年）11月14日に千葉県指定史跡に指定され、その歴史的価値が保護されています。

出土品の保管・展示

能満寺古墳から出土した貴重な副葬品は、明治大学博物館（東京都千代田区）に保管・展示されています。これらの展示を通じて、古墳時代前期の文化に触れることができます。

参考文献

能満寺古墳に関する研究は、以下の文献に詳しく記述されています。

史跡説明板（千葉県教育委員会・長南町教育委員会、1991年、2015年、2021年設置）
大塚初重「能満寺古墳」『国史大辞典』吉川弘文館
小林三郎「能満寺古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年
「能満寺古墳」『日本歴史地名大系 12 千葉県の地名』平凡社、1996年
「能満寺古墳・能満寺裏遺跡」『千葉県の歴史 資料編 考古2（県史シリーズ10）』千葉県、2003年

関連情報

油殿古墳群
伊甚国造

外部リンク

* 能満寺古墳 - 千葉県教育委員会

能満寺古墳は、房総半島の古墳文化を理解する上で欠かせない遺跡です。その歴史的意義を理解し、大切に守り伝えていく必要があります。

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