能瀬さやか

能瀬 さやか（のせ さやか）

1979年生まれの能瀬さやか氏は、日本の医師として広く知られる存在で、特に産婦人科及び内科の分野で活躍しています。出身は秋田県秋田市ですが、父親の転勤により青森県へ移り住み、その後八戸市で育ちました。能瀬氏は、八戸市立長者中学校と青森県立八戸高等学校を卒業した後、北里大学医学部で医学を学びました。

研修医として同愛記念病院での勤務を経た後、2006年には東京大学医学部産婦人科学教室に入局しました。彼女の医師としてのキャリアの中で、特に注目すべきは2012年に国立スポーツ科学センター（JISS）に内科医として採用されたことです。ここで彼女は女性トップアスリートの診療やメディカルチェックに従事し、後に2017年に東京大学医学部附属病院において女性アスリート外来を新設しました。この診療所は国立大学として初の試みであり、従来のトップアスリートに限らず、パラアスリートや一般の学生選手、中高年の市民ランナーに対しても対応を拡大しました。

能瀬氏は、日本産科婦人科学会の専門医、指導医、及び日本生殖医学会の生殖医療専門医など、多くの資格を持ちながら、2023年には第15回YMFSスポーツチャレンジ賞やウーマン・オブ・ザ・イヤー2024を受賞するなど、その活動は多岐にわたります。

研究と社会貢献

能瀬氏は、女性アスリートの健康に関する研究にも積極的に取り組んでいます。特に、スポーツ医学が「整形外科」の分野とされがちな中で、女性アスリートが抱える「婦人科問題」に着目し、それに関するデータを基にした研究を行なっています。彼女は自身がアスリートだったころ、医学生時代に見た「女性アスリートの三主徴」（無月経、骨粗鬆症、エネルギー不足）に関する記事から、産婦人科医としてアスリートをサポートする新たな道を考えるようになりました。

JISSでの勤務を通じて、彼女は女性アスリートの40%が無月経や月経不順の問題を抱えていることを知り、アスリートたちが月経をコントロールする手段について理解が不足していることに驚かされました。さらには、指導者たちが「月経が止まったらアスリートとして一人前」という誤った認識を持っていたことも明らかにしました。

これらの発見は、彼女が約700名の女性アスリートのカルテを調査した結果、2012年に「日本における女性アスリートの三主徴の問題」として日本臨床スポーツ医学会で発表されました。この研究は大きな反響を呼び、後の女性アスリート健康支援委員会などの設立に寄与しました。

教育・啓発活動への取り組み

この数年で女性トップアスリートを取り巻く環境は大きく変化しましたが、能瀬氏は今もなお若者たちへの教育を重視しています。彼女は、強い月経痛や月経前症候群、PMDDなどについての知識を10代から持つことが重要であると訴えています。さらに、若い女性が無月経や低体重を抱えることで、20歳頃に骨量のピークを迎えられず、結果的に疲労骨折のリスクを高めることになると警告しています。

能瀬氏は、「手遅れになる前にサポートできる体制を作りたい」と強く語り、若年層の教育が未来の女性アスリートたちを助ける鍵であると信じています。彼女の活動は、専門な医療の枠を超え、女性アスリートの健康やキャリアに大きな影響を与える重要なものであり、今後の発展が期待されます。

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